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<野口みずき×前田穂南スペシャル対談>「次の目標は“アレのアレ”」女子マラソン日本記録更新をゴールではなく通過点へ 

text by

和田悟志

和田悟志Satoshi Wada

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photograph byNanae Suzuki/ Sidekicker 森脇育典

posted2024/02/27 11:00

<野口みずき×前田穂南スペシャル対談>「次の目標は“アレのアレ”」女子マラソン日本記録更新をゴールではなく通過点へ<Number Web> photograph by Nanae Suzuki/ Sidekicker 森脇育典

2時間16分、17分では走りたい

野口 MGCファイナルチャレンジ設定記録(2時間21分41秒)ではなく、日本記録を狙っていたわけですね。

前田 3月の名古屋ウィメンズマラソンで設定記録を超えてくる選手が出る可能性は高いので、設定記録を基準にするのではなく、しっかり記録を出したいと思っていました。

野口 私も現役だった時には、世界大会の選考レースでは誰もが納得するようなタイムを出して日本代表に選ばれたいって思っていたので、すごく共感します。
それにしても、インパクト大き過ぎだよって思っちゃいましたが(笑)。

前田 でも、最後のほうは天候が悪くなってきたし、体もきつくて脚が止まりそうで、ちょっと焦りも不安も出てきました。

 ただ、前にウォルケネシュ・エデサ選手(エチオピア)がいたので、エデサ選手を見て、最後まで我慢して脚を動かしていきました。

野口 私がベルリンで日本記録を出した時(2005年)も、38~39kmの地点が本当にきつかった。キロ4分ペースまで落ちているんじゃないかっていうぐらい脚にきていました。だけど、ここまで来て日本記録を出さなかったらもったいないっていう“もったいない精神”で最後まで走り切りました。あれだけの練習をやってきたんですから。

前田 私も、トラックに入って時計を見た時に、2時間19分を切れるか切れないか微妙でした。ここまで来たら2時間18分台で走りたいっていう一心で最後は走っていました。

野口 苦しいから“もういいや”って思ったら、どんどんペースダウンしていくだけ。心技体っていう言葉がありますが、マラソンのような持久系のスポーツでは“心”が一番重要と思うんです。執着心だったり強い気持ちを持っていないと、目標って達成できない。

 前田さんは自分で目標を立ててちゃんとコントロールできている上に、動物的な感覚が備わっている。だから、面白いんですよ。規格外みたいな感じがします。常識にとらわれないっていうところが本当に素晴らしい。

前田 自分では、あんまり気にしたことがないので、分からないんですが(笑)。

野口 そこがいい! あまり意識せずに取り組んでいるということが、すでに常識にとらわれていない!

 ただでさえ、天満屋さんの練習はすごいのに、前田さんはさらに磨きをかけていろいろやっていると聞きます。もう十分、常識を超えたことをやっているんだと思いますよ。

前田 実は、私は過去の先輩たちの練習メニューを見たことがないんです。こういう練習ができたら、これぐらいのタイムが出るという基準が自分では分からない。そんな状態で、ずっと練習をやってきました。だから、周りから“これぐらいで走れるよ”と言われても、“えっ!”って自分で驚くことがありました。自分の中で、基準はあまり気にしたことはない。ただ我武者羅にやってきました。

野口 私は監督、コーチの出した設定ペースを絶対超えるぞ、という意気込みで練習に取り組んでいました。練習は120%、試合が100%っていう感覚でした。

 前田さんもまた、目標を達成するために、どんなきついことでもやってきたからここまで来たんでしょうね。

 どこまで記録は伸ばせると思いますか?

前田 どこまでいけるかは分からないんですけど、2時間16分、17分では走りたいと思っています。

野口 前田さんだったら、絶対にまだまだいけそう!

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