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野茂英雄が「藤浪くんに伝えたいことがある」阪神・藤浪晋太郎、メジャーへの意識が変わった日…盟友アナウンサーが明かす「渡米前日譚」
text by
堀尾大悟Daigo Horio
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/02/28 06:01
今季、ニューヨーク・メッツでMLB2シーズン目を迎える藤浪晋太郎。阪神で一軍に定着できていなかった彼がメジャー挑戦を決断するまでに何があったのか
レジェンド投手からの、思いがけない言葉
2018年のある日、服部は甲子園球場でタイガース戦のリポーターを担当する。その日の解説者が、あの元ロサンゼルス・ドジャースの野茂英雄だった。
メジャーの道を切り拓いたパイオニア・野茂が関西テレビで解説する、年に一度の特別な一日のリポーターを任された服部。その野茂から、思いがけない言葉をかけられる。
「きみ、藤浪くんと仲いいんでしょ? 彼に伝えたいことがある」
数日後。大阪市内のとある会食の席に、服部はいた。同じテーブルを野茂、関西テレビのスポーツ部長(当時)、そして藤浪が囲む。
野茂は現役引退後、2016年からサンディエゴ・パドレスのアドバイザーに就任していた。メジャーで2度の最多奪三振のタイトルを獲ったレジェンドは藤浪の潜在能力を高く評価。結果が出ずピッチングが小さくなっている藤浪を気にかけていたのだ。その日は技術面だけでなく精神面でも様々な言葉をかけ、励ました。
「藤浪くんならメジャーで通用するよ。腕振って投げてデッドボールになったら仕方ないやん」
2人の豪腕の奇跡のような邂逅。服部は奇しくも「キューピッド」としてその場に居合わせることになった。
「その日を境に、藤浪も今まで以上にメジャーを意識するようになったと思うんです。その年のオフに会ったときには『球団にも話してみるわ』と言っていました」