青木を支えたケンドー・カシンからの言葉

　当初の試合とはまったく意味合いが違ったが、これはこれで“青木真也の仕事”だったのだ。この日、青木のセコンドにはプロレスラーのケンドー・カシンがついていた。カシンは青木にとって憧れの存在。「ケンドー・カシンのようになりたい格闘技人生だったし、それは今も変わらない」と言う。

「これで終わりという試合をケンドー・カシンに見てほしかった。それですべて納得できるし完結できる」

セコンドを務めたケンドー・カシンと抱擁　©ONE Championship

　結果としてカードが変更になったが、それでもカシンがセコンドにいてよかったと青木。代打のリネカーと対戦することになったと伝えると、カシンはこう返してきたそうだ。

「お金（ファイトマネー）上がったんでしょ？ よかったね。今日はもってるよ。やること一緒なのに相手が小さくなって、お金も上がって最高じゃないですか。一番ダメなのは試合しないことだから。よかったよかった。これでボーナス取ったら言うことないですよ。取りましょう」

　これがカシンのマインド、プロレスラーの思考なのだと青木は嬉しそうに言う。“あえてポジティブに”というのでもなく“素”でこれが言えるから凄いのだと。

「カシン先輩の言葉でだいぶリラックスできましたね」

　もちろん、ノースカットと闘えなかったから“宙ぶらりん”の自分は残ってしまう。「死ねなかった」自分を踏まえて、今後のキャリアを作っていくつもりだと青木。

「これからどうするか。今の僕はまさしく死に損ないですからね。その自分を晒していくしかない。でも格闘技をエンジョイするってことは決めてるので。まずはONEとゆっくり話がしたいですね」

《後編に続く》