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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
試合直前のカード変更「俺にここまで求めるのか…」それでもなぜ青木真也はリネカー戦を受け入れた? 支えられた「ケンドー・カシンの言葉」
posted2024/02/15 17:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
ONE Championship
「これで死ぬつもりだったから」
青木真也は当然のようにそう言った。彼が“死に場所”に定めたのは1月28日の有明アリーナ。主戦場にしてきたONE Championshipの日本大会だ。彼はこの大会でアメリカのセージ・ノースカットと対戦することになっていた。
ノースカットはUFCでも勝ち越している強豪。一方の青木は40歳で、2022年に2連敗を喫している。2023年はMMAの試合が組まれなかった。
そういう中で、青木はノースカット戦に向け「最後」という言葉を使った。引退ではない。格闘技そのもの、闘うことは続けるつもりだが、世界レベルのMMA、その最前線での闘いはこれで最後にするという意味だ。ノースカット戦以降、青木真也のキャリアのあり方は変化するはずだった。だが、実際にはそうならなかった。
当日の対戦相手変更…現場では何が?
大会当日、メインカード出場選手が登場するオープニング・セレモニー直前のことだ。青木のもとに「セージが出場しないと言っている」という連絡が入った。ビザに不備のあったセコンドが帰国の途についてしまい、万全なサポートのない布陣では試合ができないというのだ。
「最初はONEのマッチメイカーから話があって。ノースカットがホテルから出てこないから、バックアップで来ている(ジョン・)リネカーと試合をしないかと。でも僕はノースカットとやりに来てるわけで。“ノースカットを連れてくるのがそっちの仕事ですよね”と話を戻したんですよ。そしたらチャトリが出てきた」
チャトリ(・シットヨートン)氏はONEのCEO。青木とは旧知の仲で、かつては選手とセコンドという関係だった。
「経営者と選手という関係になってからは距離も生まれてたけど、長い付き合いでもある。その俺にここまで求めるのかと」