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日大アメフト部“あの”「悪質タックル問題」で《消えた天才QB》の告白…日本一から急転直下「もうフットボールは無理やろうなって」
text by
北川直樹Naoki Kitagawa
photograph byNaoki Kitagawa
posted2024/02/18 11:05
「悪質タックル問題」で暗転した日大アメフト部…1年時からエースQBを務めていた林大希は、リーグ降格などを経て最後の4年目での甲子園ボウル出場を目指した
「意外とやらされていたんじゃなく、自分たちも(好きで)やってたんやな」
何もない、空っぽの期間が3カ月ほどつづいた。
猛練習から効率重視へ…突然の方向転換
騒動後には部外の監督選考委員会が立ち上がり、9月には立命大などでコーチを歴任した橋詰功が新監督に就任した。橋詰監督は効率を重視した理知的な指導方針をとるタイプで、練習方針が大きく変わることになる。
「グラウンドでは2時間練習。あとはミーティングと筋力トレーニングをして、その他はプライベートの時間」
橋詰監督からは、最初のミーティングでこう告げられた。林が振り返る。
「大学に入るまではそういうやり方(効率重視の方針)が正しいと思っていたんですが、いざ入学すると、真逆の根性練を1年間続けることになった。ただ、それで日本一という結果が出てしまった以上、自分たちの考え方も変わってきていたんです。そのタイミングでまた元に戻るとなると、素直に納得することはできなかったです」
いま振り返ると、過去の成功が足枷になっていたという。
たった2時間だけの練習。「それまでの感覚ではウォーミングアップくらいの量です。『アップしてどうすんの?』って思いましたから」と林は当時の気持ちを振り返る。
「最初は我慢して橋詰さんの言う通りにやっていたんです。でも練習が思うようにできなかったり、何かにつけて『お前らのやり方は間違っているんだ!』と言われたり……。方針の転換は全部、『否定』からはじまったので、そういうのがフラストレーションとしてどんどんたまっていきました」
橋詰監督と練習中に衝突したことも何度かあった。だが、徐々にお互いの考えが同じ軌道に乗ってくる。
最終的に橋詰監督と選手らの考えが完全に一致したと感じたのは、公式戦への復帰が認められた2019年秋リーグの最終戦で、桜美林大に勝って上位リーグへの昇格をつかんだときだという
「多分、TOP8(1部上位リーグ)昇格という結果が出たからだと思います。あとは丸1年かけて橋詰さんのやり方、サイクルに慣れてきていた。結果と時間ですね。それから……橋詰さんの“根気勝ち”かな」