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日大アメフト部“あの”「悪質タックル問題」で《消えた天才QB》の告白…日本一から急転直下「もうフットボールは無理やろうなって」
text by
北川直樹Naoki Kitagawa
photograph byNaoki Kitagawa
posted2024/02/18 11:05
「悪質タックル問題」で暗転した日大アメフト部…1年時からエースQBを務めていた林大希は、リーグ降格などを経て最後の4年目での甲子園ボウル出場を目指した
今振り返れば、橋詰監督も最初はある程度、誇張してコミュニケーションを取っていた部分もあったのではないかと林は言う。
「例えば『2時間しか練習しない』っていうのは、コミュニケーションを重ねていくと誤解もあったんですよね。『全体でやる練習は2時間。あとはお前らでやれよ』っていう。橋詰さん自身も、最後は(練習の)“量”だっていう考えを持っている人でしたから」
再び「聖地」甲子園にたどり着くには…?
橋詰監督が就任してからチームで目標に掲げていたのは、甲子園ボウルへの最短出場。つまり、タックル問題を経て2019年に1部下位リーグからの復帰となったフェニックスにとって、林たちが4年生になる2020年の秋に聖地へ舞い戻ることだった。
「タックル問題があってから、今までのことが全て報われるには、結局甲子園に戻るしかないと思ったんです。神様に与えられた試練。甲子園に行けなければ、全てが無駄になってしまうと思いました」
それでも、そこまで辿り着ける実感と手応えまではつかめなかった。20年は新型コロナウイルスの影響で春の試合がなくなり、自分たちの現在地が一切確かめられなかったからだ。
ただ、皮肉にも1年生のときに味わった、果てしない、どこが答えなのかわからない猛練習の経験がここで生きたと林は言う。
「いきなりリーグ初戦の相手が前年2位の法政で。1部の上位リーグでは試合もできていないわけで、相手がどれくらい強いのかわからなかったんです。その上、自分らの力も客観的にはわからない。そんな中でひたすら努力をしないといけないという状況です。1年生のときの経験がなかったら、多分やりきれてなかったと思うんです。もっと前で折れてしまったんじゃないかな」
結果はその法政に競り勝ち、その後も順調に勝ちを重ねて、甲子園ボウルへの出場を決めた。
ただ、“タックル問題”以後の過酷な環境から復活を果たした満足感があった一方で、具体的な目標を掲げていたことに対する反省もまたあるという。