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《日本代表・失敗の本質》板倉滉は言い訳しなかったが…アジア杯前から“多くのハンデ”、中東勢のロングボール対策は? 取材記者が検証 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2024/02/09 17:02

《日本代表・失敗の本質》板倉滉は言い訳しなかったが…アジア杯前から“多くのハンデ”、中東勢のロングボール対策は? 取材記者が検証<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

バーレーン戦最終盤、足を痛めてピッチに座り込んだ板倉滉。実は大会前から厳しい状況の連続だった

 ドイツ優勝の大きな要因は、大会のトレンドを読めたことだった。開催国のブラジルは国土が広く、縦に長い。移動時間の長さに加え、寒暖差や湿度の差が大きく、選手の肉体に負荷がかかると彼らは予想した。その上で、理想的なサッカーを披露するのは難しいと判断。左サイドバックにはセンターバックが本職のヘヴェデスを起用して守備に重きを置いた。

 また、戦術家レーブがセットプレーの練習をするのを渋る中で、当時はアシスタントコーチとして参謀役だったフリックがレーブをどうにか説得。戦術練習の時間を減らしてまでセットプレーに取り組み、効果を発揮した経緯がある。

中東開催における「戦略」こそ失敗の本質では

 今回のアジアカップは日本代表がもっともリスペクトを受けるなか、中東のカタールで開催された。その上で「戦略」設定に失敗の本質があったのではないか。

 日本代表が2023年で8連勝を飾る中、多くの試合で機能していたのは、ミドルゾーンに相手を引き込んでからのショートカウンターだった。となれば、対戦相手はその展開を避けるための手を打ってくることは予想できた。

 もう1つ見逃せないのが、この大会が中東で行なわれたこと。

 中東での試合では、何てことの無いクロスや、精度を欠くシュートでもスタンドは盛り上がる。中東勢の多くがロングボールを武器にするのは、観客の求めるゴール前の攻防を繰り広げるためには最適だからだろう。

 結果的には、選手の戦術理解度が高くないチームはシンプルにロングボールを蹴ってきた。もう少しレベルの高いチームになれば日本にハイプレスを仕掛けさせたうえで、ロングボールを蹴りこむ。それによって日本の守備を間延びさせ、最終ラインとの勝負に持ち込んできた。そして日本は、その戦略に苦しんだ。

「機能しなかったポケット攻略」を示すデータとは

 そもそも、日本が今大会にむけて取り組んでいたのは、ペナルティーエリア内の深い位置、ゴールエリア外側の「ポケット」と呼ばれるエリアの攻略だった。これは、相手を押し込む時間が長くなるという前提のもとでの戦略だ。

 なお、今大会の「ポケット」攻略はクロス成功率の向上につなげることも目的の一つだが、そこも上手く機能していなかった。参考データとして、AFC発表の各試合「クロス成功率」のデータ(AFC発表)を載せておく。

【次ページ】 「機能しなかったポケット攻略」を示すデータとは

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