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鈴鹿消滅もあり得る!? 開催権料が高騰一途にもかかわらず、大阪観光局がF1を誘致する裏事情
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byJIJI PRESS
posted2024/01/26 11:00
ファンなら見慣れた日本GPのスタートシーン。聖地鈴鹿の命運やいかに
現在、日本GPを開催している鈴鹿も例外ではない。世界最高峰のサーキットのひとつと言われている鈴鹿で行われている日本GPの開催権料は、ヨーロッパの伝統的なグランプリと同等と言われている。しかし、その契約は24年まで。25年以降の開催に関しては、現在F1側と交渉の真っ只中。大阪がF1の誘致を再開したのは、そんなタイミングだった。
過去に大阪がF1開催を断念したのは公的資金だけでは高額な開催権料が賄えなかったためだ。ところが、今回F1の誘致を目指す大阪観光局は「民間による運営なら、採算は取れる」とし、国内外の多くの企業と組んで誘致を目指そうとしている。大阪は高額な開催権料を提示されることを前提で、今回再び手を挙げたのである。
F1には「1カ国1開催」という原則がある。過去には日本で2開催行われたこともあり、現在アメリカでは1年に3グランプリ行われているため、例外的に再び日本で2開催される可能性がないわけではない。ただし、今年の日本GPが輸送上の問題によって秋から春に移動したことを考えると、春に日本GPを開催した後に、秋に再び大阪でF1を開催するのは現実的ではないし、春に日本でF1が2度開催される可能性はさらに低いだろう。
つまり、25年以降の日本GPは、鈴鹿vs.大阪の一騎打ちの様相を呈している。そして、鈴鹿といえども、今回の戦いは一筋縄ではいかない状況に直面している。F1をエンターテイメントと捉えるなら、大都市での公道レースは多くの集客が見込め、経済的効果も大きい。ファン、主催者、F1にとってウィン・ウィンとなることだろう。
鈴鹿を存続させるために
しかし、F1は自動車レースというスポーツであることを忘れてはならない。
「俺はレースをやるところが欲しいんだ。クルマはレースをやらなくては良くならない」
鈴鹿はホンダの創業者・本田宗一郎の信念のもと作られた日本初の全面舗装サーキットだ。本田宗一郎の夢によって多くの技術者が鍛えられ、世界へ挑戦するドライバーたちが鈴鹿から巣立った。そして、鈴鹿で戦う彼らから、私たちは勇気をもらってきた。
だから、鈴鹿を愛する人たちに言いたい。いまこそ、私たちは鈴鹿に恩返しをしようじゃないか。今年の日本GPは4月5日から開催される。スタンドが鈴鹿を愛する人たちで埋められることを期待したい。