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プロ野球PRESSBACK NUMBER
甲子園に響いた衝撃音「あ、藤浪のストレートが…」“絶好調の谷内亮太”を襲った悲劇「ヤクルト、日本ハム…仲間に愛された男の11年間」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byKYODO
posted2024/01/29 11:00
盛大な引退セレモニーでスポットライトを浴びる谷内亮太(2023年9月)
2回の第1打席では、センター前へ先制タイムリーを放った谷内。4回の第2打席は2死一塁でショートゴロを打ち攻守交代となったところで、飯山裕志コーチに呼び止められた。「監督がライトへ行ってくれ、って」
「え? なんでですか?」と驚いた谷内に返ってきた答えは、「ライトスタンドのファイターズファンに姿を見せてきて」という監督のメッセージだった。
「最初はひたすら、打球飛んでくるなよ、と思っていました。外野の守備なんていつ以来ですかね。グラブすら用意していませんでしたから。でも、今思うと確かに最後にファンの方たちに姿を見せる機会をいただけたのは良かったです。もうちょっと打球が飛んできていたらミスしていたかもしれないですけどね(笑)」
大先輩も登場「エスコン最初の引退試合だったから…」
もう一つ、サプライズがあった。引退セレモニーで唐突にグラブを渡されると、登場したのはヤクルト時代の大先輩で尊敬していた宮本慎也氏。入団時のポジションであるショートで“ラストノック”を受け、はにかみながら帽子をとって頭を下げた。
「本当に知らなかったのでびっくりしました。悲しい気持ちが飛んでいって背筋が伸びて……急にシャキンとしちゃいましたね(笑)」
新庄監督とチームメート、球団からの感謝と愛情が込められたセレモニー。自他ともに認める「地味な」選手だった谷内へ、それは最後のド派手な餞だった。
「友達からは『お前、そんな存在だっけ?』と言われましたし、家族も不思議がっていました。エスコンで最初の引退試合でしたから球団も今後へのベース作りじゃないけれど、色々と試行錯誤してくださったんじゃないでしょうか(笑)。10人目くらいだったら、こんなもんでいいか、って感じだったかもしれません」
そう朗らかに笑った谷内。温和で堅実、「地味だけど凄い」選手の11年間は、どんな道筋だったのだろうか――。