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「キックオフ直前まで参考書を…」青森山田の元コーチが驚いた“進学校サッカー部”の日常とは? 選手権8強→すぐに難関大学受験へ
posted2024/01/16 06:01
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
青森山田高校の優勝で幕を閉じた全国高校サッカー選手権。出場者の中には、感傷に浸る間もなく受験シーズンに突入した選手もいる。夏の甲子園とは異なり、サッカーやラグビーは高校生活の総決算が年末年始に行われるため、その両立を最後(年度末)までやり切ることは実に難しい。
今大会、初出場でベスト8という大躍進を見せた名古屋高校は県内有数の進学校だ。ハーフタイムにスタンドの部員たちが参考書を開いて勉強している姿が中継で話題になったが、これは決してパフォーマンスではなく、彼らにとって当たり前の日常である。実際に、先日の共通テストを受けて、ここから2次試験にチャレンジをする部員がほとんどだという。
進学校に加わった“青森山田イズム”
山田武久監督が2006年にコーチに就任以降(2015年から監督)、メキメキと力をつけて、2013年度のインターハイで悲願の全国初出場を達成。そこから県内では強豪校の仲間入りを果たしたものの、“全国の壁”を越えられずにいた。だが、3年前の2021年に大きな転換期を迎えた。
かつて青森山田高の守護神としてインターハイを制し、同校GKコーチとして選手権優勝を2度も経験している大久保隆一郎をヘッドコーチとして招聘した。山田監督の「もっと強くなりたい」という純粋な想いから、名古屋産業大学、名古屋FC EAST(U-15)で指導していた大久保に白羽の矢が立った。
就任1年目は週1日で指導に当たった。大久保は他にも星稜高(石川県)、霞ヶ浦高(茨城県)でも同じようにスポットで指導を行ってきたが、文武両道を志す選手たちの本気度を肌で感じるようになってからはその日数をどんどん増やしていった。
大久保の心を動かしたのは、選手たちの「本気で文武両道を目指す」という意志と、それを実現する難しさ。そこをサポートすることにやりがいを感じた。