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兄を見た瞬間「キツさがなくなった」…箱根駅伝7区「兄弟給水」で区間賞、中大・吉居駿恭が告白する“絶望からの復活劇”「箱根は走れないかと…」
text by
加藤秀彬(朝日新聞)Hideaki Kato
photograph byNaoki Kitagawa
posted2024/01/13 06:00
7区の15kmで実現した吉居駿恭(2年)と4年生の兄・大和の「兄弟給水」。 あのシーンと区間賞の走りを見せるまでに何があったのか。駿恭に話を聞いた
区間新記録を狙う、と。
優勝は厳しい。でも、自分が区間新記録の走りでチームの勢いを取り戻せば、シード権は獲得できるはずだ。そう信じてスタート地点に立った。
何か一つでも、中大のファンに…
たすきを受け取った吉居は、序盤の下り基調のコースを利用し、軽快に走り出した。昨季、5000mで日本人学生トップの13分22秒01を出した実力は本物だ。5km付近までに一気に4人を抜いた。
だが、7km付近になると、早くも「差し込み」がきた。脇腹あたりが苦しくなる。
ただ、走っていると、沿道にいる中央大学を応援する人たちの姿が目に飛び込んできた。優勝をめざしていたのに、こんな順位で走ってしまい、申し訳ない。そう思うと同時に、「何か一つでも、中大のファンにとってうれしいことがあって欲しい」と思った。
あの先輩が待っていたのは、その先の10km地点だった。
「このまま後ろをしっかり離せばシードはいけるぞ!」
給水を担当したのは、連絡をくれた千守。そして、次の15kmの給水地点で待っていたのは兄の大和だ。