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「ファイターの顔じゃない」告げた妻…扇久保博正(36歳)がRIZIN完勝で証明した“世界レベル”「堀口(恭司)選手にいつか勝ちたい」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2024/01/10 11:00

「ファイターの顔じゃない」告げた妻…扇久保博正(36歳)がRIZIN完勝で証明した“世界レベル”「堀口(恭司)選手にいつか勝ちたい」<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

元UFCランキング1位のドッドソンを判定3-0で下した扇久保博正

 カード発表会見では「次が最後という決意で」と語った扇久保。試合に向けて、家族と離れ1カ月ほど1人暮らしも。

「子供と戯れてる時に、奥さんに“ファイターの顔じゃない”と言われました。“1人で練習しろ”と」

 キャリアを比較すれば、ドッドソンのほうが格上。しかし扇久保は、対戦相手としての相性はいいと踏んでいた。曰く「ドッドソン選手が負けてるのは僕みたいなタイプ」。そしてテーマは「根性」だと言った。ドッドソンの爆発的な攻撃力を粘り強く封じ、ペースを奪う。その狙い通りに、扇久保はドッドソンを攻略した。

元UFCランキング1位を“泥沼”に引きずり込み…

 1ラウンドはテイクダウンに成功。ドッドソンはストライカーだからこそテイクダウンディフェンスに長けていたが、それでも粘り強く崩していった。しっかりと抑え込み、肩固めでプレッシャーをかけるとマウントポジションへ。元UFCランキング1位を得意の“泥沼”に引きずり込み、パンチとヒジを打ち下ろした。

 2ラウンド以降はスタンドの展開が続いたが、扇久保は主導権を渡さない。ドッドソンはタックルを警戒したのだろう、思い切って打撃で踏み込めないのだ。逆に間合いを保てることで、空手のベースがある扇久保の蹴りが入りやすくなった。ローキックでダメージを与え、左右のハイキックも。判定3-0は文句なしだ。

 2年ぶりの勝利について「勝つってこういう感じなんだなと思い出しました」と扇久保。そしてファイターとしての偽らざる思いも口にした。

「この2年、結婚して子供もできて幸せだったんですけど、格闘技の試合では連敗。心の底から幸せではなかった。やっぱり僕は格闘家なんですね。最大の幸せは試合で勝つことなんだなと」

 ドッドソンに勝つことの意味についても語っている。

「僕の中ではUFCで組まれてもおかしくないカードだったと思ってます。フライ級世界トップクラスの選手に勝つことができて、自分も世界トップクラスなんだと再認識できました」

「UFCは僕を取らなかった。“この野郎”と」

 扇久保にとって、ドッドソンは「どうしても負けたくない相手」だった。単に世界レベルの強豪というだけでなく、自分が出場できなかったUFCで活躍した選手。過去の悔しさを払拭するためにも勝たなくてはいけなかったのだ。“やっぱりUFCの選手はレベルが違う”などと思いたくはない。

「UFCは僕を取らなかった。“この野郎”という気持ちでいます」

【次ページ】 いつか堀口に勝つ…諦めない男の執念

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