「オシャレがダメという環境だったら、もっと早くに陸上をやめていたかもしれませんね。会社が私のことを理解してくれた分、競技ではしっかり頑張ろうと自分に厳しくいられたのかなと。ここまで続けてこられたのは、自分の個性を犠牲にせずにいられたのも理由の一つではあったのかなと思います」

後輩たちが憧れる「カリスマ性」

　女性アスリートが容姿にこだわることへの風当たりも強かった時代のなかで、彼女ほど個性を全身で表現してきた選手はいなかったように思う。そうしたカリスマ性に惹かれる後進たちも少なくない。

　たとえば、東京五輪女子4×100mリレー代表の青山華依（甲南大）は、以前から憧れの選手に和田の名をあげている。

「でも、私って王道のオシャレではなくて、かなり個性的なタイプだと思うんですよね。綺麗よりカッコいいを目指していたので、みんなが日焼け止め塗って練習している間、私はオイル塗っていましたから。後輩たちに刈り上げとかも『めっちゃカッコイイですね！』って言われるけれど、『じゃあやりいや！』って言っても絶対してくれないんです（笑）」

「綺麗」より「カッコいい」を目指していたという和田さん　©Shigeki Yamamoto

　和田はそう笑いながら謙遜するが、きっと若い世代のアスリートは、個性をしっかりと打ち出していくという“カッコいいアスリート像”に共感を抱いているのだろう。

　その一方で、高校や大学では、部則として選手のヘアカラーやメイクを禁止しているチームも少なくない。高校球児の「坊主以外の髪型解禁」のようにその風潮は徐々に和らぎつつあるが、和田はそうした旧来的な考え方にも一定の理解を示している。

「一理あるなとは思います。雰囲気がゆるくなったとしても出来る子はいいのですが、中にはメリハリがつけられなくなる子もいるんですよね。指導者としては『できない子をなんとかしてあげたい』という思いがあって、化粧やオシャレを禁止するというケースもあると思います」

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