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「競技に支障が出ることはしない」がポリシー…陸上界の“オシャレ番長”だった和田麻希(37歳)が学生選手のメイク禁止に「一理ある」と思うワケ
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph byL)AFLO、R)Shigeki Yamamoto
posted2024/01/18 11:04
現役時代はド派手な金髪やサイドを刈り上げたツーブロックなど、ビジュアル面でも注目を集めた和田麻希さん
「絶対に念頭に置いていたのは、競技に支障が出ない範囲で楽しもうということでした。例えば、手にジェルネイルはしていましたが、足の爪にすることはなくて。なぜかというと、スパイクって自分の足型に合わせて、ミリ単位までこだわって作ってもらうものなんです。
ジェルの厚みが出ることでその感覚が変わるのは嫌だなと。あと、ごちゃごちゃしたアクセサリーは走っている最中に邪魔になるかもしれないので着けませんでした」
彼女のトレードマークでもある「刈り上げ」にも、0.01秒の世界で争うスプリンターのこだわりが反映されていたそうだ。
「髪を刈り上げたり、編み込んだりしていたのは、自分がしたい髪型な上に風の抵抗も減らせるなと思っていて。海外ではドレッドヘアのスプリンターもいますが、私はあの髪型で速く走る自信がなかったので(笑)。どちらかといえば、“競技にプラスになるオシャレ”を楽しんでいましたね」
曲げなかった“自分の中の芯”
近年、女性アスリートがオシャレやメイクを楽しむことへの理解は深まっている一方、いわれのない批判や中傷もいまだに燻る。“オシャレなアスリート”の先駆け的な存在だった和田だが、そうした逆風を感じることはなかったのだろうか。
「それが意外にも、有り難いことに私の周りには批判的なことを言う人がいなかったんです。学生時代こそダメとは言われていましたけれど、ミズノでは個性を認めてもらって、自分らしくいれたのかなと。
後半になると、楽しみにしてくれる人も多かったんです。『次どんなんにするの?』とか『ええやん、気合入ってるやん!』とか言ってもらえたのはすごくうれしかったですね」
和田が世間に受け入れられたのは、初期から「見た目もカッコいいアスリートでいる」との芯を曲げずに、自身の色をしっかり打ち出してきたからだろう。長年、女子短距離界のトップで活躍できたのも、そうした“自分らしさ”を崩さずにいられたからだ――と彼女は言う。