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現役ドラフトで移籍の佐々木千隼が「人目もはばからず泣いた夜」牛タンを手に部屋を訪れたのは…「お兄さんみたい」朗希も慕う右腕の旅立ち〈ロッテ→DeNA〉
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/12/11 06:00
現役ドラフトでベイスターズに移籍する佐々木千隼
現役ドラフトでの移籍が発表されると、色々な人に報告をした。偶然にもロッカールームには21年にベイスターズからマリーンズに移籍をしてきた国吉佑樹投手がいた。
国吉からは「ベイスターズはものすごく雰囲気はマリーンズに似ていると思うよ」と声をかけられ、様々な助言をもらった。練習を共にするなどこれまで様々なアドバイスをもらってきた西野勇士投手からは「チームが替わっても自分のやることは変わらない。シンプルにそう思うことだと思う。自分のやるべきことをやる。やらなくてはいけないことをやる。そうだろ?」と優しく話しかけられた。
吉井理人監督は監督室にいた。「頑張ってこい」と送り出された。入団以降、先発を中心に起用されていた佐々木千隼を21年にセットアッパーで起用をしたのが当時投手コーチだった吉井監督だった。2016年ドラフトで5球団競合の末、鳴り物入りで1位指名を受け入団し、1年目こそ先発で4勝を挙げたものの、翌18年は右ひじを手術して一軍登板なし。19年は2勝で20年は春季キャンプ中に右肩を痛めて大きく出遅れ、わずか5試合の登板で未勝利に終わった。勝負の5年目となった翌21年、54試合に登板をして防御率1.26で8勝。抜群の安定感でチームを支え、大きく飛躍した。
人目もはばからず泣いた夜
オールスターゲームにも選ばれるなどセットアッパーとして大車輪の活躍をみせたシーズンで、忘れられないゲームがある。佐々木千隼の活躍もありマリーンズは優勝マジックを点灯させていた。1シーズン制での優勝マジック点灯は70年以来、51年ぶり。マジックは着実に減り、リーグ優勝が現実味を帯びていた。
残り3試合でマジック「3」。対象チームのバファローズが全試合を消化し、残りは勝つのみ。仙台でのイーグル戦1試合と本拠地ZOZOマリンスタジアムでのファイターズ戦2試合を全部勝てば悲願の優勝という状況だった。
10月27日、仙台でのゲームは1対1、緊迫した状況で8回を迎えた。佐々木千隼はこの回から3番手として登板。島内宏明に内野安打で出塁を許すと1死一、二塁から小深田大翔にライト前に決勝打を浴びて敗れた。141試合目で悲願のリーグ優勝が消滅し、試合後は、人目もはばからず泣いた。