濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
自給自足を求め群馬へ、“マタギレスラー”驚きの人生…FUMAは“模造ライフル”構えリングへ「移住先でプロレスをやるなんて(笑)」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/11/29 11:04
プロレスリングBASARAの群馬・甘楽町大会メインに登場した“マタギレスラー”のFUMA
もちろん、狩猟には危険も伴う。離れた距離なら動物のほうから逃げてくれるが、近距離でいきなり出くわすとそうはいかない。
「向こうも生きるか死ぬかなので、必死で攻撃してくる。猪も大きくなると牙の大きさ、鋭さは相当ですから。体当たりされるとスパッと切られて内臓が出てきてしまうことも。狩猟の対象ではないんですが、カモシカの角も危ないですね。それに狩猟で入る山には登山道もないですから。もの凄い斜面を行き来することになりますし、滑落事故の危険もあります」
模造ライフルを持ってリングへ上がる“マタギレスラー”
何かプロレスラーのインタビューとは思えなくなってきたが……「狩猟は鉄砲を持っていても絶対に安全なわけではない。命がかかっていることで感覚が研ぎ澄まされます。そこはプロレスにも活きてますね」とFUMA。
ジムやリングでの練習はできないが、ブラジリアン柔術の道場に通うなど自分なりの工夫をしてきた。柔術のテクニックを応用したグラウンド戦はFUMAの持ち味。BASARAの闘いに新鮮な奥深さをもたらしている。
シングルベルトを巻く今は、キャリア何度目かのピークと言っていい。田舎暮らしはプロレスにもマイナスではなかったのだ。ウェイトトレーニングの機材(パワーラック)は自宅にある。狩猟だけでなく趣味の登山もトレーニングの一環だ。農業自体も「カロリー消費としてかなりのもの」。夏場に草刈りをすると体重が1日で3、4kg落ちることもある。
今では“マタギレスラー”を名乗り、模造ライフルを持ってリングへ。コスチュームもマタギ風に変えた。入場曲にはフィンランドの“森メタル”バンド・コルピクラーニの曲を使っている。
移住したから生まれた夢
12月3日のBASARA後楽園ホール大会では、団体代表の木高イサミを相手に防衛戦。FUMAにとっては真のエースの座をかけた闘いになる。イサミとは何度も闘ってきたが、今のFUMAには甘楽町大会を成功させて得た自信も大きな武器だ。
プロレスラーという立場から、農業や狩猟の“実際のところ”を発信したいと思うようになった。甘楽町でのBASARA定期開催が一番の目標だが、それに加えて「群馬のいろんな場所で、まだプロレスを生で見たことがない人たちに試合を届けられたら」とも。移住しなかったら出てこなかった目標や夢がある。そしてそれがFUMAを強くしている。たくさんの人に知ってほしい生き方だ。