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自給自足を求め群馬へ、“マタギレスラー”驚きの人生…FUMAは“模造ライフル”構えリングへ「移住先でプロレスをやるなんて(笑)」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2023/11/29 11:04

自給自足を求め群馬へ、“マタギレスラー”驚きの人生…FUMAは“模造ライフル”構えリングへ「移住先でプロレスをやるなんて(笑)」<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

プロレスリングBASARAの群馬・甘楽町大会メインに登場した“マタギレスラー”のFUMA

試合直後に公開プロポーズ

 そういう中で「ぜひ甘楽町でプロレスを」となった。所属するBASARAは、初めてプロレスを見るであろう人たちにうってつけだとFUMAは思った。

「迫力のある闘いも、テクニックの攻防も客席を巻き込んで笑わせるような試合もある。いろんなタイプの選手がいるので、BASARAをそのまま見てもらえればプロレスの魅力を感じてもらえると確信してました」

 もちろん、1番の盛り上がりはFUMAのメインだ。タッグを組んだのはトランザム★ヒロシ。対戦したSAGATと神野聖人は大型タッグだ。デカくて強い敵に立ち向かう地元のヒーロー。分かりやすい構図はどんな人にも届きやすい。

 SAGATをフォールして勝ったFUMAは、マイクを握ると客席にいた女性をリングに呼び込んだ。サプライズで公開プロポーズ。無事にOKをもらって、大会は最高のエンディングとなった。11月には入籍。甘楽町で知り合い、交際するようになった女性だという。

「最初は1人で静かに自給自足の生活をって考えてたのに、こっちでプロレスやって結婚までするとは思わなかったです(笑)」

養蜂、キウイ栽培、狩猟も行う

 まったく、予定外のことばかりだった。地域のサポートを得たこともあり、職業として養蜂やキウイフルーツ(甘楽町の特産品だ)の栽培に取り組むことに。FUMAが作った蜂蜜は、BASARA甘楽町大会のグッズ売店で売られることになった。

 興味はあったがハードルが高いと考えていた狩猟も。猟友会と同時に鳥獣被害対策実施隊として活動している。

「全国的に鹿と猪が増えていて、大きな問題になってるんです。少し前に熊も話題になりましたよね」

 人間が自然を破壊して動物たちの居場所がなくなってしまったのか。何となくのイメージでそう思う。しかしFUMAに聞くと、実際には逆なのだそうだ。

「手付かずの自然の中で動物が繁殖しすぎたんです。人里に来るのは、増えすぎた結果、山からあぶれた動物。逆に山の標高の高い場所にも出て行って、高山植物を食べてしまうという被害もあります。希少な高山植物が失われて、そこに産卵する蝶が絶滅の危機に瀕することも」

「体当たりされるとスパッと切られて内臓が…」

 そこで駆除の必要性が高まる。それが、日本でジビエ料理がポピュラーになった背景でもあるそうだ。狩猟シーズンは冬だが、夏場も駆除は行なわれる。

「夏は葉っぱが生い茂って視界が悪いので、罠で駆除します。葉っぱが落ちて見通しが良くなる冬は巻狩り(複数人数での狩猟)。鹿の成獣一頭を狩ると、1人暮らしなら余裕で2カ月はもちます。群馬は3.11の原発事故の影響で販売が難しかったんですが、規制解除の流れがあるのでいずれジビエ販売もやりたいですね。ハムなどの加工食品だったり動物園に肉食獣のエサとして卸したり。鹿肉は栄養素的にドッグフードにも向いていて、犬のスーパーフードとも呼ばれてるんです」

【次ページ】 模造ライフルを持ってリングへ上がる“マタギレスラー”

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