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18歳の長女が女子プロレスラーに…人気選手だった母・府川唯未(47歳)が娘の決断を受け入れるまで「すぐに応援するね、とは言えなかった」
text by
伊藤雅奈子Kanako Ito
photograph byL)Takuya Sugiyama、R)プロレスリングwave
posted2023/11/23 11:02
現役時代にはアイドルレスラーとして人気を獲得した府川唯未。今年長女のきずな(右)もプロレスデビューを果たした
おこづかいで買ったプロレスのチケット
――数ある女子プロレス団体からwaveを選んだ理由は、なんだったんでしょうね。
府川 後輩の(栗原)あゆみも小さいときからかわいがってくれていて、一緒に焼肉を食べに行ったりしてたんですけど、そのあゆみがプロレスをしている姿を観て、「かっこいい!」ってなった。「あゆみはwave所属じゃないよ」って言ったんですけど、でも、waveのプロレスを観て育ったから、しょっちゅう「プロレスを観にいきたい!」って言うようになっていて。
――waveを興したGAMIさんは、お母さんのアルシオン時代の先輩。すごい運命ですよね。
府川 ほんっとにその通りで! あの子が高校2年生だった12月にGAMIさんに会いに行って、相談してたんですよ。ちょうど進路相談の時期で、「プロレスをやりたいって言いだしてるんですよ。どういう結果になるかわからないですけど、GAMIさんには報告しておこうと思って」みたいな話をしたら、GAMIさんは「しゃ~ないなぁ。でも、wave(を選ぶこと)はないやろう」っておっしゃって。その時点で娘のなかでは、プロレスラーにはなりたいけど、どうしよう、という段階だったと思うんですね。翌年3月の後楽園ホール大会の前に、「waveの試合をもう1回観たい。そこで決めたい」って言ってきて、ここで行かせちゃってもいいのかなぁって、すごく悩みましたよね。でも、自分のおこづかいでチケットを買って。
――高校生にとってプロレスのチケット代は、高額ですよ。
府川 GAMIさんは「いいよ。チケットを出すから」って言ってくださったんですけど、本人は「自分で買いたい」と。それはきっと意味のある1枚だと思うから、自分で買わせて、観にいかせたら、「やっぱりここでやりたい」って言ってきた。あー、もう私は何も言うことはないなぁって。
もし「男子レスラーと結婚したい」と言い出したら…
――今、家のなかではどう接しているんですか。
府川 私は「ケガだけには気をつけてね」とか「頭が痛かったらすぐに言うんだよ」「大丈夫?」「体調は平気?」って言っちゃうんで、たぶん「うるさいなぁ」と思ってるでしょうね。でも、親ってそういうものじゃないですか。ダンナは言葉にはしないけど、あの子はパパの気持ちをすごく読み取っているし、すごく尊敬しているのでね。自分がパパの試合を観て育ってきているので、プロレスのことで何か言われたら、「あー、そうなんだ」って納得している感じですかね。
――もし、きずな選手も将来「男子プロレスラーと結婚したい」なんて言いだしたら、どうしますか。
府川 プロレスラーだからダメとか、それは思わない。思わないけど、その人をしっかり見て、自分はどうしていきたいのかを考えてほしいですね。プロレスラーの奥さんだけが大変だとは思わないけど、私はきずなが小さいとき、ダンナが遠征で1カ月近くいないことが当たり前で、父と子の運動会に参加できないことがあったんですね。寂しい思いをさせたくないから、私がお父さんの代わりに肩車をして、力なら任せとけみたいな感じで(笑)。お父さん役をやりつつ、お母さんもやらなきゃいけないので、お父さんは外でがんばってくれていても、家庭内にいないことが多いんですね。「それでもいいのか?」と。レスラーの妻も楽ではないから。
――最後の質問ですが、次女もいますよね。もし、「私も女子プロレスラーになりたい」と言いだしたら、どうしましょうか。
府川 いやぁ、もうお願いだから勘弁してーと思います(笑)。
《インタビュー第1回、第2回からつづく》