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18歳の長女が女子プロレスラーに…人気選手だった母・府川唯未(47歳)が娘の決断を受け入れるまで「すぐに応援するね、とは言えなかった」
posted2023/11/23 11:02
text by
伊藤雅奈子Kanako Ito
photograph by
L)Takuya Sugiyama、R)プロレスリングwave
現在は、家族4人で神奈川県逗子市に在住。長女でプロレスリングwave所属の女子プロレスラー・田中きずなは、12月の誕生日で19歳になる。プロレスラー同士が夫婦になることは珍しくなくなったが、愛娘が母の先輩が興した団体に入団する例はまれだ。元レスラーと現レスラー。母と娘。その想いとは――。
◆◆◆
府川 引退してからもレスラー時代のお友達とはすごく会っていて、きずなは最初の子どもだったので、みんなから「きーたん」って呼ばれて、ほんっとにかわいがってもらっていたんですね。生まれたときは(ロッシー)小川さんから冗談っぽく、「将来はプロレスラーだね」なんて言われてたんですけど、「絶対にやらせないから!」って言って、まさか「やりたい」と言われる未来がくるなんて、想像もしてなかった。
――でも、幼いころから家庭のなかにはプロレスが転がっていたわけで。
娘がリングに立つイメージを、必死でかき消していた
府川 たしかに、ダンナは自分の試合をチェックしているし、ほかの試合も観てますからね。そのせいか、赤ちゃんのとき、泣いてどうにもならないときにプロレスをつけると、泣きやむ子だったんですよ。「もう勘弁してよ!」と思っていて(笑)。お腹のなかにいたときに、リングの音やテレビから流れるプロレス中継の音を聴いていたから、安心したのかなぁ。
――であれば、物心がついたころから実は、プロレスラーになりたかったのではないですか。
府川 小さいときは、ピアノとダンスをやってたんですよ。しゃべりだすのがすごく早い子で、2歳のときにはもうペラペラ。歌でも、耳で覚えたそのままを正確に歌えていました。「おかあさんといっしょ」(Eテレ)が大好きでね、(はいだ)しょうこおねえさんとお会いする機会があったときも、恥ずかしいという感情がまったくなくて、ばっちり歌うんですよ。3歳になったばかりのころかな。しょうこおねえさんから、「今までたくさんの子どもを見てきたけど、こんな子は初めて」って言われました。「そんなに好きなら」とリトミック(音楽教育法)をやらせて、その延長でピアノもさせた。ダンスは本人が「はじめたい」って言うんで、やらせてあげたので、親としては「あー、よかった」って。
――「プロレスラーになりたい」と言いださなくて?
府川 そうです。なんで「よかった」って思ったかというと、あの子は表現力があって、周りの空気を明るくするところがあって、リングに立ってるイメージが私のなかでときどき生まれていたんですね。それを「嫌だ」って否定して、かき消していたから、違う方向を向いてくれて、「よかった」と。