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18歳の長女が女子プロレスラーに…人気選手だった母・府川唯未(47歳)が娘の決断を受け入れるまで「すぐに応援するね、とは言えなかった」
text by
伊藤雅奈子Kanako Ito
photograph byL)Takuya Sugiyama、R)プロレスリングwave
posted2023/11/23 11:02
現役時代にはアイドルレスラーとして人気を獲得した府川唯未。今年長女のきずな(右)もプロレスデビューを果たした
「プロレスラーになりたい」娘から告げられた日
――どんなタイミングで、「プロレスをやりたい」と告げられたんですか。
府川 義務教育が終わって、高校を選ぶタイミングですね。「あー、きたか……」と。親の権限や圧力で抑えることができたのは中学までで、そこから先は娘の人生ですよね。私も10代で自分の好きな道を選んだように。ほんとはね、もう少し学生でいてくれれば、そばにいて教えてあげたいことがあったし、楽しい時間を過ごせたのかなぁと思ったりもしたけど、あの子は、そんなことよりはるかに大きくて大切なものを手に入れようとしていた。親としては、応援するしかないですよね。って、今はそういう気持ち。
――いつか来るだろうと、予想していましたか。
府川 ほんっとにプロレスが大好きだったので……ねぇ。最近になって、お友達から暴露されたんですよ。「昔、きーたんにつかまってプロレスの技をかけられた」って(笑)。幼稚園、小学生のころに友達が遊びに来ると、2階に行ってプロレスの技をかけてたらしいんです。ぜんぜん知らなくって、私。それと並行してメイクも好きだったので、友達が来ると一緒にメイクをして、みんなでおもしろい顔になって、(2階から)下りてきたりとか(笑)。
――さすが、空気を明るくする子だ。お友達にプロレスの技をかけていたことは、お母さんに内緒にしていたということ?
府川 私が「(プロレスラーになるのは)ダメ!」って言ってたから? かもしれないですね。すごく仲のいい女の子がいてね、毎日一緒に学校に行ってたんですけど、「いつもプロレスの話をされて」「きーたん、プロレスの話しかしないから、すごく詳しくなっちゃった」って言うんですね。その子もwaveに詳しくなっちゃうぐらい、毎日同じ話を繰り返されていたみたい。
「応援するね」と素直には言えなかった理由
――お母さんのケガ(編集部注:現役時代の2000年7月に急性硬膜下血腫とクモ膜下出血を経験)については、どんな形で伝えたんですか。
府川 ざっくばらんな家族なので、普通に伝えました。それも、「実はね……」という重い雰囲気ではなく。
――知ったときの反応は?
府川 あの子って、大事なことを聞いて返しがないときは、心に響いてるんですね。固まってしまうというか。話したときも何も返ってこなくて、私も淡々と続けたんですけど、そういうときこそ受け止めてる。まだ小学生だったというのもありますけど、小さい子どもなりに受け止めていたんじゃないですかね。
――長女の決意に対して、パパはどんなリアクションでしたか。
府川 うれしいとは思わないですよね。最初は一緒に反対していたので。だけど私とは違って、「ほんとにがんばっていれば、俺は応援するぞ。だから、がんばりを見せろ」という感じでした。それでも私は、「じゃあ、がんばってね」「わかった。今から応援するね」とは言えなかった。「ごめんね。認めたくはない。認めたくないけど、ほんとにやりたいんだったら、がんばっていれば、それは響いてくるから。きーたんのことは見てるから」っていう話をしました。