濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「弱すぎ」と言われ…暴走族の特攻隊長だった男のBreakingDown再登場 朝倉未来の“身内”が挑んだ「負けられない闘い」の結末
posted2023/11/08 11:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
BreakingDown
当たり前の話だが、試合には勝者と敗者がいる。これも当然だが、場の“主役”になるのは勝者だ。しかし格闘技の試合を見ていると、敗者に目が行くことがしばしばある。
殴られ、蹴られ、ノックアウトにせよ判定にせよ「お前は対戦相手より劣っているのだ」と残酷な結果を突きつけられる。言ってしまえば“赤っ恥”だ。もしかしたら全財産を失うよりも屈辱的な姿を晒す。だから敗者から目が離せなくなる。
朝倉未来が考案しプロデュースする“1分間格闘技”BreakingDown(ブレイキングダウン)も同じだ。いや、普通の格闘技以上に“赤っ恥”度合いが強いかもしれない。ブレイキングダウンでは大会前に行われる出場者オーディションや記者会見が大きな話題になる。
不良やら喧嘩自慢やらが挑発し合い罵り合い乱闘を展開する。褒められたものではないが、野蛮な面白さがあることは否定できない。朝倉未来は、選手が負けて失うものが大きいほど試合が盛り上がると分析している。
「あれだけデカいこと言って、負けたらメチャクチャ恥ずかしいぞ」
オーディションを見た視聴者は思う。それもまた試合への興味をそそるわけだ。あまり上品とは言えないが、下世話な気持ちを刺激される面もあるからこそブレイキングダウンは大ヒットしたのではないか。
朝倉未来と同じ暴走族の「特攻隊長」だった男
やまかわしょうたも、ブレイキングダウンで赤っ恥をかいた1人だ。彼はかつて朝倉未来と同じ暴走族に属し、特攻隊長だったという。8月の『ブレイキングダウン9』で初出場。注目を集めたが結果はKO負けだった。
しかも相手が「超10人ニキ2」である。ブレイキングダウンの常連。オーディションで「10人相手に1人でケンカして勝った」と豪語したが、実力を試すスパーリングで失神。そのことから10人ニキと呼ばれるようになった。
不良枠のつもりがお笑い枠。何度負けてもへこたれる様子もなく参戦し続け、念願の初勝利も挙げている。なんだかんだで力をつけていたのである。しかしイメージというのは根強いもので、やまかわは「お笑い枠の10人ニキに倒された特攻隊長」ということになった。
ネットで「やまかわしょうた」と検索すると、サジェストワードの一つに「弱すぎ」と出てくる始末。実は試合前に腰を痛めていたらしいのだが、それを慮ってくれる者ばかりではない。ブレイキングダウンは格闘技の、勝ち負けの機微に無頓着な層にまで届いたから人気を博したのだ。