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藤井聡太は八冠になるまで何を食べてきたのか タイトル戦全85局から見えた「コーヒーはアイスのみ」「うなぎを食べない」傾向
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph byKeiji Ishikawa
posted2023/11/11 06:00
10月に将棋のタイトル八冠を手に入れた藤井聡太。八冠となるまでタイトル戦で何を食べ、飲んできたのか
午前のオーダー率は93.2%だが、午後は51.2%。2日制の2日目に限って言えば、午後は43回中1回のみで2.3%ほど。雌雄が決する2日目の午後はお菓子なしという戦略を意識的に選んでいることが読み取れる。
お菓子メーカー不二家が主催している叡王戦と長丁場の王座戦だけは午後のお菓子が定跡となっているが、その2タイトル戦を除くと1日制でお菓子が運ばれてきたのは17回中3回のみ。その3回中2回はコロナで控室に自動的に運ばれてきたもの。決着が間近に迫る時は午後のおやつを控えめにしている方針がうかがえる。
藤井が唯一午後にコーヒーを頼んだ対局とは…?
おやつとともにオーダーする飲み物にも午前と午後で明らかな差がある。顕著なのがコーヒーだ。午前のオーダー率が83.76%なのに比べ、午後は0.8%。123回頼めたチャンスがあった中で、たったの1回のみ。
その1回こそが、最後の一冠を争った王座戦第3局。永瀬拓矢王座を相手に1勝1敗のタイで迎えた一戦だった。第1局を落とし、第2局は永瀬が劣勢ながらも粘りに粘り計214手で10時2分に決着し、迎えた第3局。第2局に続いての長期戦を予想してか、初めて午後のコーヒーを繰り出したのだ。なお、永瀬王座もこの一局を同じようにコーヒー必至の急所と捉えていたようで、「対局日に朝からコーヒーをがぶがぶ飲んでカフェインを摂取して自分の体に頑張れと言ってるのに、夜になったら急に寝なさいというのは無理ですよね」と対局後に明かしていた。(2023年9月28日『Number Web』)。
午後の紅茶と王道を往く注文
コーヒーのオーダーが少なくなる午後に代わりに多く注文されているのが紅茶だ。午前は紅茶類(和紅茶を含む)のオーダーが6.0%ほどなのに対し、午後は68.3%とはっきりとした“午後の紅茶”派であることが読み取れる。