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藤井聡太は八冠になるまで何を食べてきたのか タイトル戦全85局から見えた「コーヒーはアイスのみ」「うなぎを食べない」傾向
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph byKeiji Ishikawa
posted2023/11/11 06:00
10月に将棋のタイトル八冠を手に入れた藤井聡太。八冠となるまでタイトル戦で何を食べ、飲んできたのか
2022年、四冠となり渡辺三冠に挑んだ王将戦では、藤井の王道を往く食事の傾向が現れた。1月29日と30日に栃木県大田原市で行われた第3局。野菜嫌いで知られる渡辺が1日目の昼食に与一和牛のビーフカレー(サラダ抜き)、2日目に与一和牛のビーフカレー(大盛、サラダ抜き)と指定を入れながらカレーを重ねたのに対し、藤井は与一和牛のステーキ重セット(サラダ・デザートあり)、ビーフカレー(普通盛、サラダあり)と指定なしのオーソドックスなバランス重視のオーダーをそのまま採用した。
キノコなしオーダー
藤井は渡辺が行うような「大盛」や「サラダなし」、「さび抜き」などの指定をせず、選び取ったメニューをそのまま食すことが多い。唯一、目立った指定を行ったのが2020年7月の王位戦第1局2日目。地元・愛知県豊橋市での冷やしきしめん御膳(キノコなし)というオーダーだ。キノコ嫌いゆえの指定と言えよう。
なお、これ以降、「キノコなし」のオーダーはない。これは、いくつかの選択肢からメニューを選ぶタイトル戦において、候補のメニューを考案する料理人がリサーチして藤井がキノコ嫌いであるという情報を入手し、キノコ類の使用を避けてきたからだと考えられる。その配慮によって、キノコなしと指定することなく、そのまま食べられるメニューを藤井が選べているというわけだ。
藤井聡太が食べると商品がヒット
今年夏には異国の地でも食事を楽しむ姿勢が現れた。本人にとって初の海外となった6月5日の棋聖戦第1局。開催地のベトナム・ダナンを「どこか最初は知らなかった」としながらも、現地入りした対局前日には「コムガーだったり、おやつですと、チェーであるとか、いろいろ美味しいものが多いかなと思うので楽しみにしたい」と事前研究に余念がないことをうかがわせるコメント。実際、予告通りチェー(フルーツと豆のベトナム風ぜんざい)を午前のおやつに、コムガー(ベトナム風チキンライス)を昼食で頼み、午後のおやつにはバンヤロン(タピオカが使われたベトナム風ういろう)にも手を伸ばし、ベトナム料理を堪能した。