テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER

大谷翔平エンゼルス加入直後は「本拠地近くのマック店員すら知らなかったが…」“オオタニのMLBスター化”に番記者が願う“野球人気復活” 

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柳原直之(スポーツニッポン)

柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara

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posted2023/10/23 06:01

大谷翔平エンゼルス加入直後は「本拠地近くのマック店員すら知らなかったが…」“オオタニのMLBスター化”に番記者が願う“野球人気復活”<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

大谷翔平は、アメリカの野球ファンの中でも「人気者」となったのは間違いない

 敵軍の本塁打球をキャッチした本拠地ファンは、自ら進んでグラウンドに投げ返すか、そうでなくても他のファンから投げ返すように促されるものだが、大谷の本塁打球の場合は違う。全員が意地でもそのボールを離さない。

 37号を捕球したタイガースファンのセバスチャン・ブルース君(8)は「タイガースも好きだけど、翔平も好き」と大喜び。38号をゲットしたオーウェン・パターソン君(18)は「翔平は世界最高の選手。ジャッジの62本のア・リーグ記録は必ず更新できる」と本気で期待していた。大谷の絶大な人気や圧倒的な実力を表現するために、バスケットボールの神様マイケル・ジョーダンを例に出す米メディアも出てきた。

 ひいきの球団関係なく、大谷は誰もが憧れるスーパースターになっているのだ。

大谷人気の高まりは、今季最も驚いた

 この大谷人気の高まりこそ今季最も驚いた点だ。

 宿泊先ホテルのスターバックスで「大谷の取材で米国に来た」と女性店員に話すと、「凄い! 私は彼の大ファンなの! お願いだからサインもらってきて!」とせがまれ、Uber(配車アプリ)に乗れば、男性ドライバーから「俺は野球ファンではないが、大谷翔平だけは知っている。投手も野手もやって信じられない!」と熱弁されることもあった。

 大谷がケガで不在だった今季終盤の敵地ミネアポリスでのツインズ戦では、初老の球場警備員から「来年は大谷と一緒に来てね!」と笑顔で手を振られたこともあった。

 1年目の2018年は、熱心な野球ファンでない限り「大谷翔平」という選手の知名度は皆無だったと言っていい。本拠地近くのマクドナルドの店員でさえ知らなかった。

 米国では大学、プロともにアメリカンフットボールの人気が絶大で、バスケットボールも野球とは比較にならないほど人気だ。

 それは大谷の実力云々ではなく、野球の人気低下や競技人口低下の紛れもない現状だ。今でも大谷のことを知らない人々は米国にたくさんいる。だが、21年から3年連続で二刀流でフル回転し、現代野球の常識を覆す活躍を見せ続けた功績は大きい。野球人気復活へ向けて、僅かながら“風穴”が開いた実感があるのは気のせいではない。

「ケガさえなければ…」の声を払拭すればさらに

 更なる野球人気の高まりには大谷がケガなく活躍し続けることが重要になるかもしれない。

【次ページ】 打者専念の来季、三冠王だって夢ではないはず

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