テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER
大谷翔平エンゼルス加入直後は「本拠地近くのマック店員すら知らなかったが…」“オオタニのMLBスター化”に番記者が願う“野球人気復活”
posted2023/10/23 06:01
text by
柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph by
Nanae Suzuki
“大谷番”10年目を迎えたメジャー6年目の2023年シーズンが終わった。今季は3度の米国出張で計68試合を取材。44本塁打で日本選手初の本塁打王を獲得した「打者大谷」の本塁打は17本、「投手大谷」は11登板、6勝を現地で見届けた。
伝説のダブルヘッダーでの2本塁打目では笑いが
筆者が現地で見た今季のベスト本塁打とベスト登板はともに“伝説の1日”だ。7月27日のタイガースとのダブルヘッダー。第1試合はメジャー初完投を1安打で飾り9勝目。第2試合は2回に37号2ラン、4回に38号ソロを放った。
ダブルヘッダーで完封し、もう1試合で本塁打したのは史上初の快挙。2本目を打った直後に左手で左腰付近を押さえる仕草を見せ、残念ながら7回の打席で代打が送られたが、試合前にトレードされないことが発表され、「買い手」となる決断を下したチームに勇気を与える2勝だった。
規格外のパワーや技術、体力面の凄まじさはもはや論じる必要はないだろう。第2試合で2本塁打目を放った際には、記者席で米記者から大きな「笑い」が沸き起こった。信じられないことが目の前で起こると人は笑ってしまうものなのだろうか。11年の野球記者生活で初めての経験だった。
マイケル・ジョーダンを例に出すメディアも
敵地デトロイトのファンも虜にした。そもそもデトロイトで年に一度のエンゼルス3連戦で大谷が登板するとあって、第1試合前の大谷のブルペン投球には日米問わずファンの人だかりができていた。
「ショウヘイ、ボールをもらっていいですか?」
このように書かれた日本語のボードとグラブを持参していたジェーソン・ブライセン君(11)は、大谷がブルペン投球後に観客席に投げ入れたボールを見事ゲット。「ショウヘイが日本語のボードを見つけたら、投げてくれると思って前日の夜にグーグル翻訳を見ながらつくったんだ。取ってから1回落としてしまったけど、警備員が拾って返してくれたんだ」と笑顔だった。
試合後にもう一度話を聞くと「彼がタイガースを完封する直前に投げていたボールをゲットできたことは最高にクールなことだ」と汗だくで喜んでいた。