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将棋PRESSBACK NUMBER
「あああああーーっ!!」「そんなあ!!」藤井聡太“八冠達成の大逆転劇”に響いた悲鳴…記者が見た“テレビに映らなかった”全冠制覇の舞台裏
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byKeiji Ishikawa
posted2023/10/18 06:00
大盤解説会に姿を現した藤井聡太八冠。八冠誕生までの1週間に臨んだ竜王戦と王座戦を取材した記者が振り返る――
両者1分将棋となった中で、評価値は永瀬王座の90%超えとなった。「感想戦の現場に足を運びたいペン記者には折を見て声掛けします」と事前に伝えられていたが、その辺りでのタイミングで招集の声がかかった。
「あああああーーっ!!」「そんなあ!!」
希望者が集まり、対局場へと繋がるエレベーターに乗ろうと歩みだしたくらいのタイミングだったと記憶している。
「ああああああーーーっ!!」
「そんなあ!!」
取材控室、そして隣接する大盤解説会の会場からわずかな時間差で悲鳴・絶叫の声が上がった。
本当に将棋は怖いですね
移動する記者陣はスマホなどでの対局中継から目を離していたゆえ「何が起こったの?」と誰ともなく確認を取り合う状況に。それは藤井竜王・名人の「5五銀」に対して、永瀬王座が正着とは違う手を選んだ瞬間だった。
とはいえ詳しい状況は分からないまま、エレベーターに乗り、対局室近くの場所まで足を運ぶことになった(こう書いている自分も、永瀬王座が形勢逆転に気づき、頭をかきむしる映像を確認したのは、取材を終えてホテルに到着した深夜のことだった)。
「本当に将棋は怖いですね」
「両者ともに必死なのに、このようなことが起こるとは……」
か細い声が聞こえる中で20時59分、関係者が終局を告げる。誰もが緊迫感を持って、対局場へと足を運んだ。
<続く>