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将棋PRESSBACK NUMBER
「あああああーーっ!!」「そんなあ!!」藤井聡太“八冠達成の大逆転劇”に響いた悲鳴…記者が見た“テレビに映らなかった”全冠制覇の舞台裏
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byKeiji Ishikawa
posted2023/10/18 06:00
大盤解説会に姿を現した藤井聡太八冠。八冠誕生までの1週間に臨んだ竜王戦と王座戦を取材した記者が振り返る――
「伊藤七段と同い年……あっ、すみません、今は1歳上なんですけれども(笑)」
伊藤七段の誕生日は10月10日。その時点では“20歳”ということで、同学年のライバルに敬意を払いつつも品性を感じさせるユーモアに会場は大きく沸いた。
羽生会長の微笑み
会場にはスポンサー関係者とともに、日本将棋連盟の羽生善治会長も出席。「竜王戦は非常に若い棋士がスターダムを駆け上がる棋戦という特徴があります。防衛する立場の藤井さん、挑戦する立場の伊藤さん、ともに若さと実力で今回の七番勝負が実現しました」などと語ってエールを送るとともに、2人のスピーチを見て微笑んでいたのが印象的だった。
《10月7日、竜王戦第1局:渡辺明九段の話術と心配り》
6日に始まった1日目は伊藤七段の封じ手によって終え、それが7日の朝9時に開封されて対局が再開した。この日のABEMA解説は森内俊之九段と高見泰地七段。前述した小学校時代の2人の対局会場にいて、賞状を持った“藤井くん・たっくん”と笑みを浮かべる写真は将棋ファンの知るところになった。森内九段、高見七段ともに懐かしそうに思い出を語る様子を聞いているうちに、会場へと到着した。
渡辺明は“気配を消した”
この日の対局、大盤解説会には700人もの観衆が詰めかけた。関係者に聞くと「コロナ禍以降、これだけの規模は初めての開催ですが、これほどまでの人気ぶりだとは」と笑顔を浮かべていた。
対局は藤井竜王・名人が優勢に進め、17時過ぎに伊藤七段が投了して終局。静謐な空間だった能楽堂での終局直後のインタビューを終え、大盤解説会へ移動。両対局者は室谷由紀女流三段の質問に明快な言葉で答えると、会場からは万雷の拍手が鳴り響いた。
そして解説を務めた渡辺明九段はイベント中、数々のエピソードトークで笑いを巻き起こしていたが――2人が壇上に立った数分間はスッと数メートル下がり、“気配を消す”ように努めていた。そして両対局者が降壇する際の拍手にも――永世竜王資格者(通算11期)としての心配りを見た。
なお大盤解説会の休憩中には竜王戦グッズが販売されており、老若男女、四重五重の列が。“藤井人気”の高さを実感した。