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チェコ語でコーチと口論になることも…やり投げ世界女王・北口榛花が逆境でも勝負強さを出せるワケ「ハルカは6投目のスペシャリストだね」

posted2023/10/23 17:00

 
チェコ語でコーチと口論になることも…やり投げ世界女王・北口榛花が逆境でも勝負強さを出せるワケ「ハルカは6投目のスペシャリストだね」<Number Web> photograph by Wataru Sato

世界陸上で金メダル&ダイヤモンドリーグファイナルでも優勝を果たしたやり投げの北口榛花

text by

石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

PROFILE

photograph by

Wataru Sato

 陸上の世界選手権女子やり投げで日本勢初の金メダルを獲得すると、世界トップが集うダイヤモンドリーグでも年間王者となる快挙を成し遂げた。土壇場で発揮する強さと勝利への執念。北口榛花の世界一への軌跡と秘密に迫った。
 発売中のNumber1082号に掲載の[笑顔の世界女王]北口榛花「挑戦者であることを忘れずに」より内容を一部抜粋してお届けします。【記事全文はNumberPREMIERにてお読みいただけます】

 満員のハンガリー・ブダペストの国立競技場。割れんばかりの拍手の中、彼女は最終投てきで大逆転のビッグスローを放った。

「本当にすごかったし、手拍子が後押ししてくれました。“あっ、みんなが応援してくれてる”って。ああいう中で試合ができるのは選手として本当に幸せなことです」

 ワールドリーダーとして迎えた今夏の陸上の世界選手権。女子やり投げの北口榛花は日本女子選手として初めてフィールド種目で金メダルに輝き、世界の頂点に立った。

「(世界一のタイトルを獲るのは)もっと時間がかかると思っていたんですが、獲ることができて、頑張ってきて本当に良かったです」

 快進撃はそれだけに留まらない。9月には世界最高峰シリーズ・ダイヤモンドリーグ(以下DL)年間成績上位者で争うファイナルで日本人初制覇という快挙も達成した。

 DLでは昨季を上回る4勝を挙げている。6月上旬のパリ大会で65m09を投げ優勝。約5週後のシレジア大会では自身の日本記録を4年ぶりに更新した。さらに、9月のブリュッセル大会では67m38まで伸ばし、日本記録を再び更新。集中力を極限にまで高め、最高のビッグスローを繰り出した。

「絶対に負けたくない」思いから繰り出される勝負強さ

 北口の強さはラスト1投の勝負強さに集約されている。世界選手権もDL(シレジア、ブリュッセル大会)も、最終6投目でビッグスローを見せて逆転優勝、または記録を更新しているのだ。土壇場に追い込まれてからがめっぽう強い。

 逆境で強さを発揮できるのは、根底に「絶対に今日も負けたくない」「一番になりたい」という思いがあるからだ。今の北口にはどんなに暗雲が垂れ込めても、最後にはひっくり返せるという確信がある。

「代理人にも『ハルカは6投目のスペシャリストだね』って言われるんですよ(笑)。ただ、私の中ではまず1回目を投げて、そこで見えた修正を繰り返しながら6投目に向かっていくという感覚なんです。そうすれば、6投目が集大成という形になる。実は、高校時代に高校記録を出したのも6投目。一番最初に日本記録を出したときは5投目でした。

 そういった過去の自分の投てきも、“後半しっかり投げられる”という自信につながっています。ある程度前半で記録を出せれば、後半はいい勝負ができるぞって。もちろん、プレッシャーもありますけど、それ以上に『ここで悔いを残したくない』という思いの方が強いですし、それがプラスに働いていて、腹を決めて全力で試合に臨めているんだと思います」

【次ページ】 チェコ人コーチとの強い絆とは?

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