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<電撃引退>「クラシックをあきらめていた」牧場主はデアリングタクトを1200万円で落札した…一族34年の悲願「クラシック制覇」を叶えた孝行娘の物語
text by
江面弘也Koya Ezura
photograph bySankei Shimbun
posted2023/10/08 17:02
2020年秋華賞を制覇し、史上初無敗での牝馬三冠を達成したデアリングタクト。岡田牧雄氏がその出会いと岡田家のファミリーヒストリーを振り返る
その馬の名は「グランパズドリーム」
「親父、絶対に気に入ったよな」
兄弟が話をしていたその馬がデビューする前に父が亡くなる。兄弟の親友だった土井睦秋(錦岡牧場)がこの馬に名前をつけてくれた。グランパズドリーム。「おじいちゃんの夢」。1986年のダービー2着馬である。
父が亡くなって、牧場名を岡田蔚男牧場から岡田スタッドに改称した。アメリカから帰ってきたときには牧場は10町歩しかなかったが、いまでは敷地面積は100倍になり、繁殖牝馬も140頭を数える。生産馬を売るだけでなく、オーナーブリーダーとして馬を走らせ、ほかの牧場からも馬を買った。さらに育成牧場をつくり、2011年にはノルマンディーサラブレッドレーシングを創設した。岡田スタッドの生産馬には、マツリダゴッホ(有馬記念)をはじめ多くの重賞勝ち馬がいる。喧嘩しながら父から受け継いだ牧場は「岡田スタッドグループ」という企業体になっている。
やっぱり親父の血なのかな
岡田には3人の息子がいて、三男の壮史(たけふみ)が牧場で頑張っている。息子たちに言わせると岡田は「手がつけられない父親」ということになる。父と兄を見てきた岡田は自分は違うタイプだと思っていたが、「やっぱり親父の血なのかな」と言って笑った。
2020年夏。デアリングタクトが育成牧場のノルマンディーファーム(静内)に休養にやってきた。コロナで競馬場に行けない岡田牧雄はひさしぶりに馬に会った。
「見るのは、送りだして以来かな。馬がすごく良くなっていた。ここまでにしてくれた厩舎に感謝してますよ」
3歳夏から秋にかけて急成長
調教師の杉山晴紀は自分の目の届く範囲に馬を置いておきたかったようだが、馬の成長を促すために休養期間に夜間放牧をさせるのは岡田の方針である。ここは岡田の考えを理解してもらった。