バレーボールPRESSBACK NUMBER
16歳で代表デビューした“女子バレー超新星”の今「ほんまに頑張りたい」25歳になった宮部藍梨の進化とは? キャプテン古賀紗理那も信頼
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYuki Suenaga
posted2023/09/18 11:06
高校時代の活躍も記憶に新しい宮部藍梨。日本代表に復帰してからは、ミドルブロッカーでの起用が続いている
古賀の言葉を体現するように、宮部は結果で示して見せた。
ペルーとの開幕戦ではミドルブロッカーとしてスタメン出場し、サーブでブレイクを重ね、二段トスやレシーブでも献身的なプレーを見せて勝利に貢献。翌日のアルゼンチン戦ではセッターの前や後ろからのA、Cクイックに加え、ライトに開いてスピードのある平行トスも打ちこなす。セッターに近い位置からの攻撃では高さを活かし、ライトからの攻撃ではアウトサイドヒッターとして重ねてきた経験が活かされた。
さらに、特筆すべきはサーブだ。
アルゼンチン相手に1、2セットを難なく連取した後の第3セット、相手の好守に攻撃が阻まれ、中盤にはこの試合で初めて10対11とリードを許した。古賀のスパイクですぐさま同点としたが、アルゼンチンは攻守のリズムも良く、勢いもありどちらに流れが転ぶかわからない。そんな拮抗した展開で流れを引き寄せたのは、宮部が対角線上に放ち、エンドラインの前へノータッチエースを決めたサーブだった。
「1セット目はサーブミスが連続していたので、後半はミスを少なく、プラス点数も取りに行く。ゲームの中で修正するのは難しいんですけど、そこが修正できたのは個人的にもよかったです。私はコートのゾーン5(ネットを正面に見て左側)から対角線上に打つのがベースなので、距離がある分思いきり打つ。難しい状況でも、セットの始めでもとにかく同じように、自分の強みを意識して打つことだけ心がけていました」
実は“不調”だったサーブ
満面の笑みでそう振り返る、会心の1本。だが実は、開幕前の合宿で宮部のサーブは不調を極めていた、と明かしたのは古賀だ。
対角に打ちたいのに、打球はコート中央に飛んでいく。何本も同様のケースが続いたのを見かね、古賀が宮部に声をかけた。
「もう少し打点を上げて、腰を切る感じで打ったらいいんじゃない?」
「もうやったんです。でも、腰を切ることばかり意識しすぎてしまって、対角線どころか違う方向に行く。だから今違う方法を模索中なんです」
一本、一本、確かめながら打ち、うまくいかないと感じればコーチに尋ね、またサーブを打つ。その姿勢もさることながら、古賀が感心したのはまた別のところでもあった。