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「井上尚弥を追う日本人ボクサー」“25戦無敗”王者…中谷潤人25歳とは何者なのか? 竹原、畑山も教えた米国人コーチ「ジュントがイチバンだ」
posted2023/09/17 17:14
text by
林壮一Soichi Hayashi Sr.
photograph by
Getty Images
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9月18日に、WBO世界スーパーフライ級タイトル初防衛戦を迎える中谷潤人(25歳)は、7月20日から9月2日まで、恒例のLAキャンプで汗を流した。今回こなしたスパーリングは、トータルで236ラウンド。15歳にして単身で渡米した頃から二人三脚を続けるルディ・ヘルナンデス、そして岡部大介トレーナーの指導を受け、帰国の途についた。
「2023年の最優秀KO賞だ!」
5月20日、最終ラウンドでアンドリュー・モロニーを仕留めたカウンターの左フックは鮮やかだった。米国内には「現時点で、2023年の最優秀KO賞だ!」と語るボクシングジャーナリストがいるほどだ。
2回、11回とダウンを奪った中谷は、最終ラウンドを流しても、2階級制覇を成し得た。それでも本場で自身の存在をアピールするのだと、圧巻のノックアウト勝ちを飾った。勝利を収めた直後、新チャンピオンは全身で喜びを表した。ポーカーフェイスの中谷にしては珍しい光景だった。
だが、それをコーナーからルディが諫めた。実弟のジェナロを世界チャンピオンに育て上げ、竹原慎二、畑山隆則、伊藤雅雪ら日本のトップファイターのコーチも務めた名伯楽は、中谷の耳元でそっと囁いた。
「ストップ、ジュント! 相手あってのボクシングだ。倒されてリング上で寝ているモロニー、そして彼の家族の気持ちを思い遣れ」
ルディは振り返る。
「本当は私自身、心の底から嬉しかったんだがね。今後、何年も語り継がれるであろう美しいノックアウトだった。ただ、このくらいで満足するような選手じゃないのも事実。本人がもっともっと上を目指していることは、十分に理解しているよ。
私が手掛けた選手のなかで、ベストはジュント。持って生まれた才能もあるが、何より人の話を聞き、体得するための努力を惜しまない。柔軟なメンタルがあるうえ、自分を律することに長けている。だから大きく伸びたし、試合でも動じないのさ。もっともっと飛躍できるよ」
「1年半後くらいにバンタム転向かな」
メキシコ移民の血を引く、1962年10月27日生まれのルディは言った。