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井上尚弥相手でも、絶対に逃げない。
田口良一が「強いヤツ」を探す理由。
posted2018/01/21 08:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Shigeki Yamamoto
WBA、IBF世界ライトフライ級王者、田口良一、31歳、ワタナベジム所属。2団体の統一王者となり、ライトフライにおけるトップ・オブ・トップの戦いに繰り出している。
大晦日の2団体王座統一戦で、田口は一段と株を上げた。
IBF王者ミラン・メリンド(フィリピン)は昨年5月、八重樫東に衝撃の初回TKO勝ちして暫定王者から正規王者となった猛者。そのメリンドに対し、いつものように尻上がりにテンポを上げていく「田口スタイル」で圧倒して3-0判定勝ちした。
試合から2週間が経ち、傷ひとつない顔をこちらに向けた。
「9回が終わって、トレーナーに“ポイントで負けているから行け”と言われて(倒しに)行ったんですけど、楽しいと思いながらやっていました。精神的、体力的に余裕がありましたし、メリンドは気持ちが強くて、打ち合いながら楽しいなって。トレーナーに“あと2回早く、ペースを上げていたらKOできていたんじゃないか”と言われたので、そこは次の試合に向けた課題かなって思いますね」
相手を見切ってから押し切る強者の戦い方。
実際は、9回までポイントで負けていない。ジャッジ3者ともにメリンドを支持したのは1、5、9回。それ以外は威力のある左ジャブを小気味よく当て、左ボディー、右ストレートを中心に優勢に試合を進めていた田口に支持が集まっていた。
だが受け身に回った9回の流れを引きずってしまえば勝ち切れないどころか、ダウンを許せば逆転される可能性もある。その危険性を感じ、チーフセコンドの石原雄太トレーナーがハッパを掛けたというのが真相だろう。
冷静に戦っていた田口も焦っていたわけではない。スイッチを押すタイミングを図っていた。終盤の3ラウンドでは余力のある田口と、余力のないメリンドの差が如実に表れた。
相手を見切ってから押し切る「横綱相撲」、いや「チャンピオンボクシング」と言うべきか。打ち合いを楽しむほどの余裕に、田口の進化を見る思いがした。