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「井上尚弥を追う日本人ボクサー」“25戦無敗”王者…中谷潤人25歳とは何者なのか? 竹原、畑山も教えた米国人コーチ「ジュントがイチバンだ」
text by
林壮一Soichi Hayashi Sr.
photograph byGetty Images
posted2023/09/17 17:14
25戦無敗の王者、中谷潤人。今夏のLAキャンプで本人と米国人コーチを取材した
「ジュントはバンタムで、最高のパフォーマンスを見せるだろう。あと1年半か2年後くらいに転向かな。バンタムで成熟することを確信している」
WBCウエルター級11位だったルディは、スパーリングの折、毎ラウンド、テーマを決める。「このラウンドではポジショニングを考えろ」「次のラウンドは敢えてロープを背負って、ディフェンス主体で戦え」「前足のステップでプレッシャーをかけて追い込め」「ノーガードでディフェンスしてこい」「ジャブだけでやってみろ」「この回は倒して来い」といった具合だ。
中谷は15歳からルディの教えを忠実に守り、一つ一つこなすことで打たれないボクシング、そしてボディバランスの良さをベースとした無駄のない動きを身に付けた。今回の236ラウンドのスパーリングでも、与えられたテーマを確実に実行した。
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「15の時からルディを全面的に信頼してやってきました。それは今もまったく変わりません。言われたことを実戦で、タイムリーにやることを心掛けています。ルディの指示をモノにすれば、成長出来ると肌で感じます。
サウスポーの僕にオーソドックスで戦え、とか考えもしないことを言われることも多いです。でも、日々の練習で味わっていますから、試合でも不安なくやれますね」
“井上尚弥のスパーリングパートナー”
今回のキャンプでは、スティーブン・フルトン戦に向けた井上尚弥のスパーリングパートナーを務めたジャフェスリー・ラミドとも8ラウンドを消化した。ラミドとのスパーリングにおけるWBOスーパーフライ級王者は、鋭いジャブを上下に放ち、胸にダブルの左ストレートを入れたりと、技術の高さを見せた。
ただ、押してはいたが、ラッシュはかけなかった。ルディの指示で深追いしなかったのだ。
「ラミドがいいテンポで打ち返してくるので、焦らすようにもっていきました。彼はタイミングが非常にいい選手です。スパーリングをするのは3年ぶりでしたが、昔の方が当て辛かった気がしますね」
筆者が中谷のLAキャンプを取材するのは1年ぶりだが、2本目の世界タイトルを獲得後、彼の表情からは精神的な余裕が見られる。それでも中谷は謙虚な姿勢を崩さない。
「前回の試合でああいう形で倒せて自信になりましたし、ボクシングの幅が広がったかなとは思います。でも、たとえ今日の内容が良かったとしても、スパーリングはあくまでもスパーリング。色々試す場所なんです。一つの事だけをやるのではなく、様々な局面に対応することを考えています」
スパーリングを終えてサンドバッグを打つ時も、中谷はコーチ陣から掛けられた助言を反芻し、テーマを忘れずに動き続ける。
午前5時から夢中になった“井上尚弥vsフルトン”
現在、25戦全勝19KOの中谷の身長は172cm。このクラスにしてはかなりの長身だ。リーチも176cmある。次戦の相手は、メキシコ人ファイターであるアルヒ・コルテス(28歳)。中谷は目の前の試合を丁寧に勝ち続けていくことを課しているが、ファンからは井上尚弥との対戦を期待する声も上がる。LAキャンプ中、中谷もESPN+で井上尚弥vs.スティーブン・フルトン戦をTV観戦した。