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「両脚の蹴りは命にかかわる」落馬だけではない“競馬の痛い瞬間”とは? 元騎手見習いの芸人が明かす競馬学校時代の「危険な体験談」
posted2023/09/09 17:01
text by
松下慎平Shimpei Matsushita
photograph by
Getty Images
高校卒業後に単身オーストラリアに渡り、騎手見習いのライセンスを取得したお笑いコンビ・テンポイントの松下慎平。落馬によってプロのジョッキーになる夢を絶たれた競馬芸人が明かす、落馬だけではない“競馬の痛い瞬間”とは……。競馬学校時代の「危険な体験談」をNumber Webに寄稿した。(全2回の1回目/後編へ)
落馬だけではないホースマンの「痛い経験」
現代の日本を生きる人の中で、「落馬」というものを経験した人はどれくらいいるだろうか。戦国の世ならいざ知らず、令和という時代に街中で聞いて回ったとすれば、おそらく100人に1人もいないだろう。そもそも、普通に生活していれば馬と触れ合う機会さえ滅多にない。私自身もオーストラリアの競馬学校卒業後、夢半ばで日本に帰国して約20年。馬に触れた回数は片手で数える程である。
私の経歴を知らない人に「昔、オーストラリアで騎手見習いをしていた」と伝えると、ひとしきり驚かれた後に「落馬したことある?」と質問されることがある。「何度も振り落とされたよ」と答えると「やっぱり痛い?」と続けて尋ねられる。私は「落ち方とタイミングによる」と答える。はっきりしない答えだなと思われているのだろうが、事実なのだから仕方ない。そしてそのような会話のたびに私は思うのだ。
何も痛いのは落馬だけではないし、落馬の怖さは「痛み」に限ったことではない、と。
騎手にかぎらず、現場で働く全てのホースマンには落馬以外にも様々な危険がついてまわる。
その危険や痛み、恐怖の一部を、本稿では紹介させていただきたい。そのうえで、レースで騎乗する騎手や、パドックでリード(引き綱)を握る厩務員がどれだけ体を張り、命をかけてサラブレッドと向き合っているのかを知っていただければ幸いである。