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花巻東の仲間が「麟太郎まで回せ!」“最終打席は8回裏”のはずが猛反撃→“泥だらけヘッスラ”佐々木麟太郎のスター性「まだまだ自分は…ただ」 

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間淳

間淳Jun Aida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2023/08/20 17:03

花巻東の仲間が「麟太郎まで回せ!」“最終打席は8回裏”のはずが猛反撃→“泥だらけヘッスラ”佐々木麟太郎のスター性「まだまだ自分は…ただ」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

9回裏、打席が再び回ってきた際の佐々木麟太郎。花巻東から羽ばたき、今後どんな打者となるか

 佐々木はチームに勝利をもたらす打撃ができなかった。期待された本塁打、さらには長打も出なかった。岩手県大会から腰の違和感に苦しみ、相手チームにも警戒され、歯がゆい打席が続いた。

「まだまだ自分は大した打者では…ただ」

 それでも、1回戦の宇部鴻城戦と3回戦の智弁学園戦では、それぞれ3本の安打を放ち、打点も記録した。満足なスイングさえできずに無安打で初戦敗退した昨年のセンバツとは違い、甲子園を沸かせる選手に成長した。聖地を楽しむ余裕もあった。

「まだまだ自分は大した打者でもないのに、注目してもらえてうれしかったです。結果よりも、大歓声の中でバットを振れたことが良かったと思います。最後の打席では力が足りずに打てませんでした。ただ、打席が回ってきたところは、自分も何かを持っていると感じました」

 規格外のパワーで騒がれていても、まだ高校3年生。当然、弱点や課題はある。高校通算140本塁打の記録には「力の差がある高校との対戦や練習試合を含めるのは疑問」、「強豪校は試合数が多い」などと異論を唱える声もある。だが、どんな相手であっても、140本の本塁打を積み重ねる難しさは野球未経験者でも容易に想像できる。

 佐々木は甲子園の土を持ち帰らなかった。

「自分の野球人生は終わりではありませんし、後輩が自分たちの目標を達成してくれると信じています」

 次のステージは大学なのか、プロなのか。進路については明言を避けたが、再び観客を沸かせ、脚光を浴びる舞台が訪れるだろう。まさか回ってくるとは思わなかった高校最後の打席は、佐々木のスター性を感じさせた。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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