松坂大輔「怪物秘録」BACK NUMBER
松坂大輔「沢村賞、しかし苦悩の3年目」(連載30)
posted2023/08/20 09:00
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Kiichi Matsumoto
2年連続最多勝タイトルを獲得して迎えた3年目。過去最多の240イニング以上を投げ、沢村賞を獲得するも15勝15敗で貯金を作れず、満足とは遠いシーズンとなってしまった。
新田小次郎は、野球マンガ『光の小次郎』(水島新司)の主人公である。20歳の頃の松坂大輔は、マンガの中で小次郎が投げた低めのボールゾーンから高めのボールゾーンへ伸びてくるストレート、“光る球”を投げたいと、本気で取り組んでいた。
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確かに、けっこう本気でした(笑)。若い頃の僕は野球マンガからヒントを得ることがよくあったんです。あのときにイメージしていたのはキャッチャーミットの向きでした。ミットの捕球面が下を向くような、ホップしてくるストレート。それが小次郎の“光る球”です。小次郎はその球をオールスターで投げたんですけど、自分でもどうやって投げたのか、わからなかった。彼は何とかその球をもう一度、投げたくて“光る球”の感触を探し求めます。