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“久保建英の師匠”シルバ37歳引退「カメラマンの自分は持っていた」スペイン黄金期の魔法から“失意のクボに声掛け”…決定的瞬間の数々
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2023/08/12 17:01
レアル・ソシエダ、スペイン代表時代のダビド・シルバ。稀代の名手を撮り続けて気づいたこととは
両チームのキャプテンは、イケル・カシージャスとジャンルイジ・ブッフォンのGKが務めていた。
スペインの前線には、本職のフォワードは置かれず〈クワトロ・フゴネス(4人の創造主)〉と呼ばれたチャビ、イニエスタ、セスク、シルバの4人に加え、ブスケッツ、シャビ・アロンソがいた。
対するイタリアの前線には、悪童と云われる、カッサーノとバロテッリ、中盤にはピルロにデ・ロッシ。守備ラインもカテナチオの名に違わぬメンバーが揃っていた。
両チームのタレント力に差はなく、錚々たる顔ぶれが並ぶ。
グループステージ初戦でも顔を合わせた結果は1-1。決勝を前に勝者を予想することすら難しかったのだから、 いつ誰がゴールを決め、どこでセレブレーションを行うのかなど想像することもできなかった。
雑誌の表紙を飾った1枚は忘れられないものに
たまたま目の前のゴールで先制点が生まれ、目の前で選手の喜びを撮影できただけだったが――シルバとチャビが喜びで抱き合う写真は、大会後に発売された「Number PLUS」の表紙として使用され、忘れられないものとなった。
そしてもちろん、すぐキヤノンさんに最新機材の注文を入れた。いつまで経ってもお金は貯まらない……。
10-11シーズン、バレンシアでの活躍を経てマンチェスター・シティに移籍してから撮影する機会は減ってしまったけど、それでもCLの舞台や代表選手としての彼を撮影する機会はあった。
いつしか、その左腕にはキャプテンマークが巻かれていることも多くなってきていた。
10シーズンに渡るプレミアでの活躍を終え、20-21シーズン、シルバはスペインへ戻ってきた。クラブは、スペイン北部バスク州にあるレアル・ソシエダだった。
写真に写るその顔からは――もちろんその年月分の変化を感じたが、ピッチで見せる優雅なプレーに変わりはなかった。
この時すでに久保はレアル・マドリーからのレンタル移籍でラ・リーガ2年目を迎えるところだったが、将来2人が同じチームでプレーすることになるとは露知らず、直接対決を撮影した際には、似たような体格、左利きなどの共通点から、学べるもの、盗めるものがあるのではないかと感じていた。
“戦友になる前”のシルバと久保で覚えていること
この頃の撮影で、シルバと久保の絡みで記憶に残るものがある。
21-22シーズンが佳境に入り始めた21節、マジョルカ対ソシエダの試合だった。