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「オレは相撲界を離れるんだ」19歳の怪物・伯桜鵬には相撲を“やめた”ライバルがいた…異色の元アマ横綱「NFL挑戦」花田秀虎が語る、伯桜鵬との関係
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/13 17:03
鳥取城北高時代の伯桜鵬(落合哲也)、2021年撮影。高校2年、3年のときに高校横綱になっている
たとえば、これは僕の偏見かもしれませんが、「相撲では体重を増やすために、カロリーのある油ものを食べて肥ればいい」という考え方の人も多かった。でも、決してそうじゃないんです。もっと効果的な食事方法を探るなど、僕もテツも、高校時代から“アスリート寄り”の考え方だったんですね。当時の僕の周囲には、なかなかいなかった存在でした。僕より年下のテツは、食事やトレーニング方法、治療を受ける整骨院ひとつでもこだわり、相撲に対するマインドや考え方が違う。本当に、相撲に対してすべてがストイックなんです。僕もストイックだと言われていたのですが、テツはさらに自分を追い込んで、自分を、相撲を突き詰めている。それも「楽しそうに喜んで」やっているんです。
後輩ながら尊敬するところでした。
「テツの実家に泊まり込んだ」
テツは高校2年時、3年時と高校横綱になり、2021年12月のアマチュア横綱を決める「全日本選手権」では、高校生ながらベスト8に。「卒業後はすぐにでもプロに行きたい」と表明していましたが、肩のケガの治療もあり、入門は約1年遅れ、今年1月が初土俵となりました。
思い返せば、ちょうど昨年の今頃、22年の夏のこと。テツから「一緒に合宿しませんか?」と誘われたんです。 僕もアメフトに転向を決める前(※22年9月に表明)のタイミングでしたし、テツも肩の治療が済んだ頃。お互いに時間があったので、テツの地元の鳥取にある『ワールドウィング』本部(※イチローをはじめ、各界のスポーツ選手が集まるスポーツジム)で、ふたりで1週間、トレーニング合宿をしたんです。そう、テツの実家に泊まり込みでお世話になりました(笑)。自分をギリギリまで追い込んでのトレーニング。まさに血の滲むようなことをやっていました。だから、今のテツの活躍も、僕は納得できるんです。
実は、テツは僕の相撲を研究していたそうです。「トラさんのこの相撲、この時はどうやって、どのタイミングで(技を)仕掛けたんですか?」などと細かいことを訊かれたり。一応、ライバルではあったんですがね(笑)、僕の相撲のすべてを、テツには惜しみなく話していました。もちろん僕も、テツの相撲を研究してはいたのです。でも、なんとも不思議なことに、今まで一度も対戦がなかったんですよ。いろいろな公式大会で、同じ山(リーグ)にいて、「2回勝てばふたりが当たるな」という時、どちらかが負けてしまうんですよねぇ……(笑)。