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「オレは相撲界を離れるんだ」19歳の怪物・伯桜鵬には相撲を“やめた”ライバルがいた…異色の元アマ横綱「NFL挑戦」花田秀虎が語る、伯桜鵬との関係
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/13 17:03
鳥取城北高時代の伯桜鵬(落合哲也)、2021年撮影。高校2年、3年のときに高校横綱になっている
お互いが「対戦した時にどう攻めようか」と考え抜いていたのに、一度もチャンスがなかった。今後、ふたりの対戦は、しばらくお預けですよね。もしテツ――伯桜鵬と僕が土俵上で戦う日があるなら、僕が負かす自信はあるんです。戦略はもちろん秘密。誰にも言いません(笑)。
「じつは相撲を離れるんだ」
僕がNFLに挑戦する決意やその時期については、誰にも話していませんでした。もちろん、NFLに対しての興味や、相撲に対するモチベーションについてなど、テツに話したことはあります。昨年7月の『ワールドゲームズ』という世界大会を最後に(※日体大で1学年上の中村泰輝=大の里を下して優勝)、相撲ではなくフットボールの道に進もうと、僕は心のなかで決めていました。
アメリカのバーミングハムでの大会でしたが、朝ご飯を食べているときに、テツからビデオ通話で電話が掛かってきたんです。
「今日は頑張ってください!」
って。ここで初めて、テツに「この大会を最後に相撲を離れてアメフトに挑戦するんだ」と打ち明けたんです。いきなりそんな話をされたテツは、相撲界を離れる僕に対し、ちょっとさみしい気持ちがあった感じでした。でも、
「トラさんはそういうことをする人ですよね。むしろ、そっちの方向で頑張って、これからも僕にいろんなことを教えてください!」
と、ポジティブなんですよ。アメリカの最新鋭のトレーニング方法など、いろいろな情報を教えろ! ということですかね?(笑) もちろん、僕自身も勉強して、日本の大相撲界で頑張るテツに、現地から伝えていこうと思っています。
「テツと“初めて”戦う可能性も残しておきたい」
名古屋場所千秋楽の、テツの優勝争い。僕も桝席で応援していました。本当に力が入っちゃいましたよ。テツの今の活躍は”想定内”です。突き押しもいい、四つに組んでもいい。上手も切れて、下手も切れての「オールラウンダー」がテツの相撲。「じゃないと、15日間は戦えないですから」と言っていました。その通り、テツは体現していますよね。