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「もし甲子園に出ていれば…」幻となった履正社”夏連覇の夢”「だったら最後に大阪桐蔭に勝とう」「強いイメージのまま終わりたかった」
text by
釜谷一平Ippei Kamaya
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/08/07 17:09
2020年の甲子園大会交流戦で星稜高校と対戦した履正社ナイン
「すごく集中していました。ここに全部ぶつけるという気持ちです。練習できない期間、ずっと耐えてきましたから」(池田)
コーチの多田も檄を飛ばした。
「お前たちの一試合にかける思いを見せつけろ! 履正社の野球を見せてやろう」
両井大貴は、亡き父の友人からもらったという靴下を履いて試合に臨み、3打数2安打、2打点を挙げた。靴下には父の現役時代の背番号と父の名前が刺繍されていた。
池田凛は初回に先頭打者として安打を放ち、2回には4球を選んで盗塁も決めた。
大西蓮は4出塁。打点も挙げた。
2020年の夏、履正社高校野球部は聖地で躍動し、星稜高校を10―1で下した。
新チーム発足後、全試合で2ケタ安打を記録した圧倒的な得点力と、過去に例を見ないほど豊富な投手陣。これが、2020年の履正社高校野球部だった。
「頑張るってよく言うけど…」
2022年の秋。明治大学野球部の寮で、すっかり髪の伸びた池田凛に、あえて聞いてみた。甲子園を失ったことで、逆に得たものはありますか。