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「世界水泳メダル2個も問題だが…」競泳日本代表に今、何が起きているのか? コーチ「20年前に戻ってしまった」のコメントが示す“重大な課題”
posted2023/08/03 11:01
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
JIJI PRESS
7月30日、福岡で行われていた水泳の世界選手権が閉幕した。アーティスティックスイミングなどで日本選手の活躍があった一方で、寂しさを感じさせたのが競泳だった。
「弱くなるときは、一瞬なんだなと」
パリ五輪への強化プロジェクトチームの平井伯昌リーダーが大会を振り返る中でこう語ったという。
北島康介をはじめ数々の選手を育てるとともに、長年、日本代表にも携わってきた指導者の言葉は象徴的だった。
メダルの数よりも重大な問題点
成績を見れば一目瞭然だ。今大会の日本勢は目標として昨年ブダペストで開催された世界選手権の4個(銀2、銅2)を上回る5個のメダル獲得を掲げて臨んだ。だが、終わってみれば400m個人メドレーの瀬戸大也、200mバタフライの本多灯による銅2つ。メダルなしに終わった1994年のローマ大会以降では最低の数となった。
横山貴ヘッドコーチはこのように語っている。
「今の日本の現状、実力だと思います」
ただ、今大会で低調であったことを示すのはメダルの数ばかりではない。むしろメダルの数、あるいは色よりも焦点を当てるべきポイントがある。
それは全体的に記録がよくなかったことだ。
日本新記録はゼロ、自己ベストを出した選手もわずか4人。しかも代表選考大会であった4月の日本選手権で出したタイムを下回る選手も少なくなかった。