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【新記録】開幕12連勝達成のホンダが狙う、1988年のセナ&プロストが残したもう1つの偉大すぎる記録
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2023/08/02 11:00
レッドブルとして12連勝、自身としては8連勝にして今季10勝目を挙げたフェルスタッペン
だが、当時のホンダのスタッフたちが感じた後悔は、別の出来事が理由だ。それは、このレースでセナのチームメートだったアラン・プロストがエンジンのミスファイヤに悩まされた末にリタイアしたこと。もし、エンジントラブルが起きずにプロストが完走していれば、連勝記録は途絶えることがなかったかもしれない。
苦い思い出は代々受け継がれ、いまもホンダのスタッフたちの心に生きている。だから、新記録達成がかかるレースとなった第13戦ベルギーGPでも、ホンダのスタッフたちはスタートの瞬間まで気を緩めることなく、最後の瞬間までデータを確認し、排気管から出てくる煙を目視し、ラジエターの冷却装置にドライアイスを補充し続けていた。
湊谷は言う。
「PUはハードウェアですが、その信頼性を維持しているのは人間です」
最強の称号へ超えるべき記録
レッドブルの2台は1周目からペレスがトップに立ち、9周目には1-2体制を確立してライバルたちを引き離す。17周目にフェルスタッペンが首位に立つと、どちらのPUにもトラブルが起こることはなく、44周を1-2フィニッシュで駆け抜けた。
35年ぶりの新記録達成。だが、現場で仕事をするホンダのスタッフたちに浮かれた様子は見られなかった。
吉野は言う。
「開幕11連勝という記録を抜いて、うれしい気持ちはあります。ですが、われわれの偉大な先輩方が築いた記録はまだまだあります。その1つにやはり88年の16戦15勝というとてつもなく偉大な記録があります。遥か高くそびえる大記録を超えるには、今年なら22戦21勝しなければなりません。まだシーズン半ばですから、到達できてもまだ遥か先。11連勝という記録は抜きましたが、先輩たちを抜いたとは思っていません」
レッドブルが全勝を成し遂げた23年シーズン前半戦。しかし、ホンダのスタッフたちの戦いは最終戦まで続く。
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