テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER
「ショウヘイを困らせたくないからね」大谷翔平トレード報道過熱も“TVに映らない”現場取材日記「無言でシャワーを」「凄さを形容する言葉が…」
text by
柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph byRonald Martinez/Getty Images
posted2023/07/22 06:00
35号ホームラン後、渾身のガッツポーズを見せる大谷翔平。そこに浮かび上がるのは「勝ちたい」という一心である
感情爆発の35号、サヨナラ勝ち後はクールだった
《7月17日 ヤンキース戦:感情爆発35号、サヨナラ勝ち後はクールに》
2点ビハインドの7回に、大谷が両リーグトップを独走する値千金の同点35号2ランを放った。33、34号とは対象的に感情を爆発させ、今季初、自身6度目の3戦連発は、全てセンター左側の球場名物「ロックパイル」の麓へ運ぶ「デジャビュ弾」となった。
加えて初回に右前打、3回には左中間に二塁打を放っている。9回に回ってきた打席で三塁打を放てば自身2度目のサイクル安打達成という場面だったものの、空振り三振。快挙達成とはならなかったが、95試合消化時点での7度目の「サイクル未遂」は、ヤンキースOBのルー・ゲーリッグ以来、2人目の快挙。もう凄さを形容する言葉が見つからなくなってきた。
試合後は劇的な勝利に沸くナインを横目に早々にシャワーを浴びた大谷は、白のTシャツ姿と黒のキャップ姿でクールな表情を貫いた。日米メディアから取材交渉を持ちかけたが談話はなし。たしかに良い流れを邪魔すべきではない。気持ちはもう次戦に向いている。
《7月18日 ヤンキース戦:三塁打にオーナーがウッキウキ》
バックネット裏で観戦していたオーナーのアート・モレノ氏がハイタッチで喜んだ。その場面は3-1とエンゼルス2点リードで迎えた5回1死一塁のこと。6月末に完全試合を達成した右腕ヘルマンのチェンジアップを大谷が振り抜いた。打球速度110.5マイル(約178キロ)の鋭い当たりは一塁手のグラブの下を通過し、右翼フェンスに到達する。スライディングが必要ないほど悠々と三塁にたどり着き、貴重な追加点を叩き出した。
メジャーではポストシーズン進出が危うい状況になれば、シーズン後にFAになるスター選手をトレードで放出し、見返りに若手有望株を獲得するのが一般的である。今オフFAとなる大谷のトレードは、絶対的権限を持つモレノ・オーナーの意向次第だ。果たしてスタンドでのハイタッチは何を意味するのか。
サンドバル、ジャッジが語った“オオタニ評”
《7月19日 ヤンキース戦:サンドバルに質問してみると……》
クラブハウスで大谷の隣の席に座る左腕サンドバルに「ここに残って欲しいという話をすることはありますか?」と尋ねた。サンドバルは「翔平を困らせたくはないから、話題から外すようにしているよ」ときっぱり。そして「僕たちにはコントロールできないことだからね」と続けた。
気が付くと真後ろで大谷が真顔で立っていた。これは恒例の“いじり”ではなさそうだ。