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革紐で首を絞め合って…なつぽいvs安納サオリ“泥沼の名勝負”の裏にあった特別な感情とは? SNSは互いにミュート「愛と嫉妬と絶望」の8年間 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byEssei Hara

posted2023/07/20 11:01

革紐で首を絞め合って…なつぽいvs安納サオリ“泥沼の名勝負”の裏にあった特別な感情とは? SNSは互いにミュート「愛と嫉妬と絶望」の8年間<Number Web> photograph by Essei Hara

スターダム横浜武道館大会のメインで対戦したなつぽいと安納サオリ

「絶望ですよ」なつぽいのスターダム移籍に安納は…

 フリーでの再出発の直後、コロナ禍が始まった。思うような結果が出せない。タイトルに手が届かない。2022年にアイスリボンのシングル王者になるまで、もどかしさが常にあった。曰く「ベルト巻けてない、活躍できてない、話題がない。最悪ですよ」。

 一方、なつぽいは2020年からスターダムに参戦する。ハイスピード王座、アーティスト王座(6人タッグ)、ゴッデス王座(タッグ)を獲得するなど大活躍。新人時代に修行を積んだリングで、瞬く間にトップクラスの人気選手となった。ツイッターのフォロワー数を見てみたら、ようやく自分のほうが多くなっていた。それまでは安納のアカウントをミュート(表示されない状態)にしていた。

 実は安納もなつぽいのアカウントをミュートにしていた。きっかけはなつぽいのスターダム参戦だ。スターダムは女子で一番大きな団体だ。試合結果やバックステージコメントはずっとチェックしていた。

 2020年、スターダムに新しい選手が登場するというアナウンスがあった時は気が気ではなかった。「なつみじゃありませんように」と願った。だが試合当日、安納が見つめる中継の映像に出てきたのは万喜なつみ改めなつぽいだった。

「“あぁ、やっぱり出てきた”って。凄かったですね、あの時の感情は。こんなこと初めて言いますけど絶望ですよ。本当に嫌でした。見たくなかった。だけど“この光景から目をそらしちゃダメだ”って自分に言い聞かせました。今の感情をレスラー人生の伏線にするんだって」

ミュートにしたなつぽいのアカウント

 それでもツイッターはミュートしてしまった。なつぽいの活躍は嫌でも目に入ってくる。本人からの発信だけは見たくなかった。結果が出せない安納が「最悪です」と言っていた頃、なつぽいは次々と結果を出していた。もどかしさの裏にはなつぽいの存在があったことを、今の安納は否定しない。普段は「人は人、自分は自分」というタイプ。しかしなつぽいに関してだけはそうなれなかった。ツイッターのフォロワー数も比べてしまった。

「自分は試行錯誤の連続。同じ時期になつみは輝きを増していって。しかもスターダムという、私たちの思い出の場所で。大きな会場で試合して『週刊プロレス』の表紙にもなって。夢をどんどんかなえていくなつみへの感情は……悔しいとかそんな簡単な言葉では表せなかったです」

 スターダムの人気選手になったなつぽいから連絡がくることもあった。けれどプライベートで会うことは避けていたと安納。

「なつみの話を純粋な気持ちで聞けないだろうなって。スターダムでの話をされても“よかったね、凄いね”と素直に言えないだろうし、自分のことも話せない。自信をもって話せることがなくて。

 同じ団体でデビューした同期でタッグパートナーでもあった人間がどんどん輝いてる。“お前は何してんの”と言われることもありましたね。そこで“向こうが頑張ってるから私も”という綺麗な気持ちになれなかった。なつみに対してだけはなれないんです」

【次ページ】 タッグパートナーであっても“ライバル”

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