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《黒縁メガネの仕事人》1ゲーム差2位で前半戦ターンのカープを支える、藤井彰人ヘッドコーチの貢献と成果 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byNanae Suzuki

posted2023/07/18 11:00

《黒縁メガネの仕事人》1ゲーム差2位で前半戦ターンのカープを支える、藤井彰人ヘッドコーチの貢献と成果<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

ベンチでは常に寄り添うように戦況を見守る藤井ヘッドコーチ(左)と新井監督

 試合前ミーティングを行い、試合を終えて行われるスタッフミーティングでは、赤松真人外野守備走塁コーチが作戦面での確認をすることもあったという。

「僕がちょっと気になったことでも、伝えるとベンチの考えを言葉にしてくれる。試合中に思うことがあっても、試合後に確認できるので、ずれが生じない。藤井さんは僕たちにすごく気を遣ってくれていると思う」

 これまで二軍降格時はマネジャーが当該選手に告げることが多かったが、今季はヘッドコーチが伝えるようになった。組織の中で連携をはかるだけでなく、どこか事務的だったことにも血を通わせる。チームを「家族」という新井監督の下、選手に対する思いも共有する。

本物の総合力

 昨季まで野手担当はチーム打率を上げ、投手担当はチーム防御率を良くしていく。どこか各担当が独立したような印象もあった。それぞれの担当で成績を上げるアプローチによって、チーム力を上げていくような指導に映った。

 ただ、今季は各担当がセクションを越えて情報や指導を共有する。担当ではないコーチからの視点で、選手と意見をかわす光景もみられる。

 顕著なのは対戦相手の盗塁企図数だ。盗塁阻止率は.235(昨季は.204)も、クイックやセットポジション時の間合いを変化させるバッテリーの工夫によって企図数自体を抑えることに成功している。昨季112度試みられた盗塁企図数は、昨季以上に接戦の試合が多い今季は85試合で35度と激減している。

 オールスター休みが終われば、後半戦が始まる。順位争いが徐々に本格化し、1戦1戦の重みは増す。

「新井監督に請われて広島に来た。新井監督を優勝させることしか考えていない。新井監督が辞めるときが、僕が辞めるとき」

 立場を守ろうとする保身の言葉はひとつも聞かれない。終わりを覚悟して指導に臨む気概を持ったコーチは、意外と少ない。新井監督と一蓮托生——。批判も責任もすべて受け入れる覚悟があるからこそ、芯がブレない。後半戦もチームが頂点に立つために、黒縁眼鏡の奥の瞳を光らせる。

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