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葛西純「新日本プロレスでこんなのアリ?」有刺鉄線、竹串、大流血…エル・デスペラードの“超刺激デスマッチ”でカメラマンが目にした熱狂
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2023/07/09 17:00
7月5日の後楽園ホール。ジョン・モクスリーとのシングルマッチで、凶器のチーズスライサーを手にするエル・デスペラード
聖地・後楽園ホールは「大熱狂の2日間」に
7月4日と5日は、そのSTRONGが満を持して日本初上陸を果たした大会だった。必ずしも「デスマッチを楽しみにチケットを買う」という層がメインというわけではなかったのだ。
では、実際の会場はどんな空気だったのか。
結果から言うと、大熱狂の2日間になった。プロレスの聖地・後楽園ホールでの戦いに臨むレスラーたちのテンションは高く、平日開催ながらチケットを完売させた観客も同様だった。この相乗効果により、後楽園ホールで開催された過去の新日本の大会を含めても、屈指の盛り上がりを見せた。
もちろん、葛西が出場するためFREEDOMSのファンも来場していた。デスペラードと葛西のタッグということで、デスマッチのファンも駆け付けていた。それでも、多くはSTRONGを見たくて訪れた新日本のファンだった。トム・ローラーの入場で完璧な手拍子を披露し、TJPとフランシスコ・アキラの「Catch 2/2」がやられそうになると悲鳴が上がる。そしてエディ・キングストンが日本のプロレスからいかに影響を受けたかを大多数が理解しており、アメリカ式のチャントも発生した。
2日間を通じて盛り上がり続けた後楽園ホールだが、4日の葛西の入場は、間違いなくそのハイライトのひとつだった。
デスマッチを行うためにSTRONGのマットが剥がされ、いつもの新日本のマットが姿を現していた。リング上では先に入場したデスペラードが全力で葛西コールを叫んでいたが、それを聞こえなくさせるほどの大・葛西コールが“狂猿”を迎えた。
デスマッチをこれまで好んで見ていたわけではない人たちまで最初からフルスロットルのテンションにさせたのは、デスペラードのデスマッチへのリスペクトが新日本ファンに伝わっていたからだろう。セコンドにはFREEDOMSの選手たち、レフェリーにはバーブ佐々木。新日本の大会、STRONGの日本初上陸だった大会の初日のメインを、デスマッチのプロフェッショナルに託す決断に至らせたデスペラードの思いが、怖いもの見たさで揺れ動いていた多くの新日ファンを「せっかくなら楽しもう」という心理状態に振り切らせていった。狂おしいほどにデスマッチに焦がれていたデスペラードは、いつしかそのデスマッチ愛で“狂わせる側”に立っていた。