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「プロレスに対する意欲が落ちていた」スターライト・キッドの“くすぶり期”は終わったのか? 人気覆面レスラーが心を焦がす“特別な相手”
posted2023/07/06 17:02
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
「プロレスに対する意欲が若干落ちていた。去年はシングルのベルト持っていたから、表に出られる場所があったけれど、今年は思うようにできていない」
スターライト・キッドはこんな言葉を口にした。
7月2日の横浜武道館。「パッション注入マッチ」と銘打たれた高橋奈七永戦は、キッドがキッド自身に課した試練でもあった。結果、頑丈なベテランの高橋に向かっていく小柄な体には、間違いなくパッションが宿された。
「オマエ、なんでそんなくすぶってるんだよ」
「去年との差が自分の中ですごく大きい。どれだけもがいても、今のスターダムのリングの中心に食い込んでいけない。どんな言葉をかけられても全部、プレッシャーに感じてしまった。苦しくてもつらくても、前を向いて突き進まなければ、プロレスラーはやっていけない。だから、道を切り開くためにこの試合、高橋奈七永戦を利用したいと思った。勝てなかったけれど、それでも前に進んでいかなきゃ始まらないから」
キッドは高橋戦を前に中西百重にコーチを依頼して、セコンドにもついてもらった。
「今回、中西百重さんに伝授してもらったモモラッチも含めて、次の『5★STAR GP』はなにがなんでも取りにいきたい。私はこういう熱い戦いが本当は大好き。プロレスが嫌いになりそうになることもあった。だけど、ずっと女子プロレスを見て育ってきたから、私にも全女魂はあると思う。もっとこういう熱い戦いをしたい。プロレスは嫌いになれないね」
試合後、高橋はキッドにエールを送った。
「やっと初対戦、こんな面白いヤツが眠っていたとはな。オマエ、なんでそんなにくすぶってるんだよ。そんなパッションがあるんだったら、どんどん道を切り開いていけるだろ。その姿が見たい。幸い、オマエがセコンドに選んだ中西百重は本当にそういうタイプだった。知ってるか。私は中西百重というライバルの背中を見ているしかなかったんだよ。だけど、だからこそ私がいる。せいぜい中西の姿を参考にして、もっともっと強くなれ」