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Jリーグで使用されるベンチは400万円超? ヒーター付きのシートまで登場、メーカー担当者が語る秘密「国立競技場のベンチは特別に作りました」
posted2023/07/09 06:00
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
JMPA
Jリーグは14席以上、ACLは21席以上、国際試合では22席以上――。サッカーの試合に欠かせないベンチは、実は大会ごとに座席数が変わる。
私たちがJリーグで目にするベンチは、ほとんどが株式会社ルイ高の「Jボックス」と呼ばれる製品。8人掛け(税込236万5000円)と6人掛け(税込203万5000円)を並べて使用することが多い。
ルイ高がサッカー用ベンチを売り始めたのは、Jリーグが開幕した1993年。'95年に移動用キャスターがつき、'97年にはアルミの採用によって大幅に軽量化するなど次々とバージョンアップし、2012年に現在のスタイルとなった。
同社営業管理部の岩藤浩司さんが言う。
「Jリーグが定めるスタジアム基準にはベンチの屋根が観客の視野を妨げてはいけないことも記されているため、屋根は透明なポリカーボネイトでできています。日産スタジアムは観客席からの見切れを極力減らすため、ジャッキでキャスターを収納して屋根を下げられる独自の仕様になっています」
ヒーター付きのシートも
ベンチで大切なのは、やはりシート。Jボックスのスタンダードモデルにはプラスチックの座席がついているが、背もたれの高い“ハイバックシート”を特注して設置しているスタジアムは少なくない。
「ヨーロッパのスタジアムでは、車載用シートメーカーとして知られるドイツ・レカロ社のシートを入れたベンチが主流になっていますが、日本でもこうしたものが増えています。選手や監督にとっては柔らかくゆったりしたイスのほうが心地よく、疲れもたまらないはず。スタジアムによっては、ヒーターのついたシートが取りつけられています」
控え選手はベンチウォーマーと呼ばれたりするが、いまどきのベンチは選手が座る前から温まっているのだ。
ベンチというと木の質感を押し出した国立競技場のものが味わい深いが、こちらも実はJボックスをアレンジしたもの。
「木のぬくもりに包まれたスタジアムの景観にマッチしたベンチを依頼され、特別に作りました。フレームの木材は、屋外でも50年もつとされるアコヤ材です」
世界でも類を見ない木枠のベンチは、国立競技場の新たな名物。それは選手たちの疲れを癒すだけでなく、多くのファンの目を楽しませてもいるのだ。