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「バスケットより家族が大事」「ジョーダンに並ぶ記録も興味なし」“ピュアすぎるスーパースター”28歳ヨキッチがNBAに染まらない理由
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byGetty Images
posted2023/06/21 17:00
NBAファイナルでデンバー・ナゲッツの初優勝に貢献したニコラ・ヨキッチ。娘と一緒に勝利を喜んだ
セルビア北部の田舎町ソンボルで、3人兄弟の末っ子として育ったヨキッチは、一見、トップアスリートとは思えないほどのんびりした雰囲気を醸し出す選手だ。アメリカのアスリートとは考え方や価値観も違い、どこかつかみどころがない。
アメリカのトップアスリートは、団体競技であっても、よくも悪くも個人の寄せ集めだ。個々の選手が最高を目指すことで、チームとしても最高の力を出せる。NBAでも、そういった考え方をする選手が大半だ。
しかし、ヨキッチは個人のスタッツには関心が低く、大事にしているのはチームで勝つことだけ。2年連続MVPの後、3年連続となるはずだった2022-23シーズンMVPを取り逃したのだが、まったく気にする様子もなかった。バスケットボールはあくまでチームスポーツだからこそ、その中で自分ひとりにスポットライトが当たるのは、彼にとって居心地が悪いことなのだ。
これまでの“スーパースター”とは違う?
プレイオフ中も、メディアが自分たちのイメージするスーパースターの型にはめるかのような質問をすると、するりとかわしていた。まるでディフェンスが彼を抑えようと必死に守るうえから、軽々とフェイドアウェイシュートを決めるかのように。NBAに入って8年たつが、今でもアメリカ式、NBA式の価値観に染まることに抵抗しているかのようにも見える。
たとえば、ヨキッチにはバスケットボールのためにすべてを犠牲にするという考え方はない。一番大事なのは家族で、それは世界のトップリーグ、NBAに入ってからも変わらない。昔から自分を導き、守ってくれた両親や兄2人の存在は大きく、高校生の頃からの恋人と結婚して娘が生まれた今は、これまで自分が信じてきた価値観が正しかったことを再確認する毎日なのだという。
「これまでもバスケットボールは僕の人生で一番大事なことではなかったし、これからもそうはならない。正直言って、バスケットボールより、家にあるもののほうが僕にとってはずっと大切なんだ」と、正直に語る。