9年前、ナゲッツに2巡目全体41位でドラフト指名されたときも、ヨキッチにとっては特に大きな出来事でもなかった。ナゲッツからはあらかじめ指名の確約があったのだが、時差がある中で夜中まで待つことはなく、指名されたときにはすでに寝ていたという。

　そして、指名の1年後にデンバーに引っ越したときは、NBAに入ることと同じぐらい、もしかしたらそれ以上に、すでにアメリカの大学に留学していた恋人（現在の妻）や、いっしょにデンバーに引っ越してくれた兄たちと暮らすことのほうが楽しみだったという。

「あの頃は、NBAに行くなんて考えてもいなかった。でも、すべてのことがアメリカでつながった感じだった」と振り返る。

　今、夢中なのは馬だ。セルビアで馬を飼っていて、地元で競争レースにも出走させている。優勝した後も、優勝パレードが3日後にあると聞き、レースに間に合うかどうかを心配していたくらいだ。

ルーキー時代のヨキッチ。1年目からローテーション入りし、2年目には大きく飛躍しエースに成長した　©︎AP/AFLO

偉大な選手と肩を並べたヨキッチ

　バスケットボール以外のことを犠牲にしなくても、NBAでMVPになれるし、優勝できる。今年のプレイオフでのヨキッチの活躍は、そんなことも示していた。

　NBAでレギュラーシーズンMVPを2回以上、NBAファイナルMVPを1回以上受賞したことがある選手は、ヨキッチで史上11人目。カリーム・アブドゥル・ジャバー、マジック・ジョンソン、ラリー・バード、マイケル・ジョーダン、ティム・ダンカンなど、リーグ史上でも名だたる選手たちの仲間入りをしたことになる。

　それでも、ヨキッチは選手としてのレガシーとか、そういったことにも興味はない。

「正直言って、そういったこと（レガシー）は考えたことがない。ただプレーしているだけ。記録だとか、そういったメディアが僕に結び付けようとしていることには興味がない。僕はただ、毎試合勝とうとしているだけ。一歩ずつ、毎試合勝とうとしている。シンプルなことだ」

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